◇絵でみる需給動向◇
EU委員会は2003年6月、EU15カ国における主要農畜産物の需給に関する中期 見通しを発表した。牛肉(子牛肉を含む)の需給見通しの概要は、次の通りで ある(需給見通しを行う上での前提条件については、本誌需給欄の牛乳・乳 製品(EU)を参照)。
牛肉生産量は、肉用牛飼養頭数の減少が続いていることや2000年末の牛海綿状 脳症(BSE)問題の再燃などによる消費落ち込みの影響から、2003年まで減少する。 2004年以降は、・牛肉消費が回復すること・域外向け輸出もある程度回復するこ と・イギリスで行われている30カ月齢以上の牛由来の牛肉の買い上げおよび廃棄 数量が、事業の見直しによって減少する見込みであること―などから2009年を除 いて増加することが予測されている。2010年の生産量は、2002年と比べて1.6% 増の757万2千トンと見込まれている。しかし、BSE問題が再燃する前の2000年の 水準(約770万トン)には戻らない。
一方、消費量は、BSE問題の再燃などの影響から2001年には671万トン(1人当 たりの消費量は、17.75キログラム)まで落ち込んだ。しかし、2002年から回復 し、2003年には732万2千トン(20.01キログラム)となり、域内生産量を上回る。 それ以降は、760万トン前後(19.96〜19.71キログラム)で推移する。2010年の 消費量は、2002年と比べて2.0%増の759万9千トン(0.3%増の19.71キログラム) と見込まれている。なお、消費量の不足分については、2003年までは介入在庫か らの放出と域外からの輸入、2004年以降は域外からの輸入により補われることが 予想される。 ちなみに、今回合わせて発表された中・東欧等10カ国(注)を含めた牛肉需給 見通しによると、2001年から2010年の間、生産量は820万トン〜830万トン台、消 費量は810万トン台〜830万トン台で推移するとみられている。
(注):キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、 ルタ、ポーランド、スロベキア、スロベニアの10カ国
域外向け輸出量は、最大の輸出先であるロシアで今年から関税割当措置が取ら れたことや同国への輸出をめぐってブラジル産などと競合することなどから2004 年まで減少することが予測されている。2005年以降は増加し、2008年には48万8千 トンまで増加する。その後は46万トン台で推移するとみられている。これは、輸 出先の分散化が行われることやロシアの関税割当措置が解除されるとみられるこ とを見込んでいるものと考えられる。2010年の輸出量は、2002年と比べて1.3% 減の46万5千トンと見込まれている。 一方、域外からの輸入については、消費の回復が顕著であった2002年以降、主 要輸入相手国であるブラジルやアルゼンチンなど南米諸国などからの輸入が増加 することが予測されている。2010年の輸入量は、2002年に比べて10.8%増の49万 3千トンと見込まれている。今回の見通しによると、EUは今後牛肉の純輸入国にな るとみられている。ただし、6月に合意した共通農業政策(CAP)改革(詳細は本 誌トピックス参照。)では、@肉用牛のと畜奨励金については金額を減額した上で 継続することを可能とするA繁殖雌牛奨励金は現行のまま存続する―といった肉牛 生産を刺激する面もある制度が今後も残された。こうしたことから、域内牛肉生産 は見通しよりも増加し、輸入は減少する可能性がある。◇牛肉の需給見通し◇
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