欧州司法裁判所がPDOの厳格な運用を図る見解
欧州司法裁、フランス、イギリスからの要請に厳格な見解
欧州司法裁判所は5月20日、グラナ・パダノチーズとパルマハムの加工、包装
の厳格な運用を図る見解を示した。これは、同裁判所が、フランスとイギリスの
裁判所から、EUの原産地呼称制度(PDO)規則の解釈について問われ、PDOで
保護された呼称を使用するには、加工、包装が、生産された地域で行わなければ
ならないという解釈を示したものである。
欧州司法裁判所は、EU成立に至るこれまでの条約が法に従って解釈され、適用
されるように図るという役割のほかに、加盟国の裁判所の申請に応じて、欧州共
同体(EC)の規則や、法の解釈や妥当性について先決権を持っている。今回の件
は、フランスの最高裁判所とイギリスの上院(最高裁判所に相当)から判断をゆ
だねられたものであった。EUでは、92年に制定された規則(2081/92/EC、
2082/92/EC)で、農産物の品質特性が生産地域に対して特別な関連を持つ場
合、その農産物に関する原産地呼称の登録を認めている。
グラナ・パダノチーズ、パルマハムの販売方法を提訴
グラナ・パダノチーズは、イタリアの北部ピエモンテ州、エミリアロマーニャ
州にまたがるパダノ高原で作られている硬質のチーズである。これは粉チーズと
して使われることが多い。パルマハムは、イタリアの中北部で生まれ育った豚を
利用して、塩だけを使用して長い熟成期間を経て作られるハムである。中でも品
質の良いものが、プロシュットと呼ばれている。
今回提訴されていた件では、グラナ・パダノチーズについては、フランスのRavil
社が、輸入したグラナ・パダノチーズを、フランス国内で加工(粉状)、包装し
たのちに販売していた。これについて、イタリアで同チーズを生産している
Biraghi社と、フランスでBiraghi社から同チーズを輸入しているBellon社がRavil
社に対し、生産地以外で加工、包装されたものを、グラナ・パダノチーズとして
販売することを中止するよう求めていた。
また、パルマハムについては、イギリスのスーパーマーケットAsdaが、パルマ
ハムを薄切りされていない状態で輸入し、イギリス国内で薄切りし、包装したも
のを販売していた。これについて、イタリアのパルマハム協会が、生産地以外で
加工、包装されたものを、パルマハムとして販売することを中止するよう求めて
いた。
生産された地域での加工、包装が条件
欧州司法裁判所は、今回の件が特に、一定の地域で、生産、加工、包装されな
ければならないことが、PDO認定の内容となっていることを強調している。また、
同裁判所は、このように条件を限定することは、グラナ・パダノチーズ、パルマ
ハムの輸出が減少することにもなりかねないが、今回は、PDOの権利を保護する
ためにとったものである。もし、今回の見解に従えないようであれば、これらの
産物の評判にダメージを与えることになりかねないとしている。
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