アルゼンチンのパンパ地域北部で大規模な洪水


2〜4月で降水量は前年同期の2倍以上

 アルゼンチンのパンパ地域北部のサンタフェ州を中心に降った雨は2〜4月の
間で711.6ミリ(データはアルゼンチン気象庁のサンタフェ空港の観測点)に達
し、2001年同期の276.5ミリ、2002年同期の315.7ミリに比べ倍以上の雨が降
った。これにより河川がはんらんし、家屋、農牧地、道路等が浸水する大災害と
なった。


 1992年の豪雨による洪水では、150万ヘクタールに被害が及んだとされている
が、現地ではそれを上回る「10年ぶりの大洪水、被害額は2億ドル以上」との報
道が続いた。


畜産関係に大きな被害

 サンタフェ州農牧商工省は5月13日、5月9日時点の被害の概要を公表した(抜
粋を掲載)。
 ・ 被害にあった農地面積:	485万ヘクタール
   うち大豆      :	29万ヘクタール
   うち牧畜(除く酪農):	429万ヘクタール
   うち酪農      :	25万ヘクタール
 ・ 被害額	        :	12億3千万ペソ
   うち大豆      :	 2億8千万ペソ
   うち牧畜(除く酪農):	 5億1千万ペソ
   うち酪農      :	 3億8千万ペソ



 被害にあった農地面積のうち9割以上が畜産関係であり、また被害額を日本円
に換算すると約515億円(1ペソ=42円)となる。このうち牧畜関係(主に肉用
牛)が約214億円、酪農関係が約159億円と合わせて7割強を占めている。


 上記被害額は、水没等した農地面積に生産物のヘクタール当たり生産者販売価
格等を乗じて試算しているが、現地では・子牛死亡率の急上昇、・家畜疾病の多
発、・近年減少傾向で推移していた牛乳生産への打撃など、将来への影響を心配
する声がある。また、道路の遮断により飼料運搬や生産された生乳の集荷が困難
な状況ともなっている。


 なお今回、大豆への被害面積が比較的少なかった理由として、現地では「生産
者の投資や農業技師の技術普及の努力により、遺伝子組み換え大豆の導入が進み、
直接災害につながった豪雨が始まる4月下旬以前には7割強の収穫が終わってい
た」ためであると報じている。


家畜は被災地から移動

 多くの牧草地が水没等しているため農業団体と組合は、家畜の移動を必要とす
る被災した農場とその家畜の受け入れが可能である農場の登録作業を開始するこ
とになった。


 これに伴いアルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)は以下の指示を出し
ている。家畜を移動させる場合には口蹄疫とブルセラ病のワクチン接種を受けて
いる必要があるが、今回の特例措置として、ワクチン接種計画等を管理している
州家畜衛生委員会(COPROSA)およびワクチン接種を実施する生産者団体(ENTE
等)が承認した移動先において2種類のワクチン接種が行われるという確認書が
あれば、SENASA支部の獣医師により移動を許可する。(移動元および移動先の
COPROSA、ENTA等、SENASA支部のすべての承諾が必要となる)。


サンタフェ州は国家に支援対策を要請

 サンタフェ州は、農牧緊急事態国家委員会設置法(1983年9月15日付け法律
第22913号)に基づき、国家に対する支援措置を要請している。法律によれば、
・公営銀行からの融資が行われるとともに、緊急事態地域として指定された場合
には利子の25%、大災害地域に指定された場合には50%が割引、・所得税の納税
を最高90日延期、・災害により飼養継続が不可能となり家畜を販売することにな
った場合は所得税を無税とするなどが実施できることになる。なお、サンタフェ
州は州法により災害地域の州税を免除する措置等を5月14日に実施した。


日本からも人道援助物資が到着

 この大洪水により多くの人々が避難生活を余儀なくされており、これに対し日
本、イタリア、アメリカなどから被災者に対して緊急援助物資が送られた。


 日本政府の緊急援助物資は各国に先駆けて5月2日に到着し、現地の被災者に
対しテント、毛布などを配布している。



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