史上最大のトウモロコシ生産量予測と価格低迷 ● ブラジル


2002/03年度の第4回穀物生産状況調査も1億トンを超える予測

 ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)が4月21日〜26日に行った2002/03
年度の第4回生産状況調査によると、主要穀物(油糧種子を含む14品目)の作付
面積は前年度を 6.1%上回る4,269万へクタール、生産量は19.1%増の1億1,521
万トンと推定されている。大豆、第1期作トウモロコシ、米などの夏期作物は収
穫の最終段階にあるため、調査結果はほぼ確定的なものとなっている。しかしな
がら、第2期作トウモロコシや小麦などの冬期作物については生産の初期段階に
あり、今後の天候によって変動する可能性があるが、その割合は全体生産量の14%
程度である。

トウモロコシの生産量が史上最大

 CONABは、穀物生産が集中する中央〜南部地方は全般的に天候に恵まれ生産性
を高めていること、北東地方においても降雨不足のため作付けが遅れた一部の地
域を除いて順調であること、特にトウモロコシと大豆の生産量がともに史上最大
になることを報告している。今回の調査で推定されたトウモロコシの生産量は第2
期作の不確定要素があるものの、4,276万トンと前年度の3,528万トンを21.2%
上回り、大豆は5,033万トンで前年度の 4,192万トンを20.1%上回っている。

トウモロコシ価格が急落

 ブラジル通貨レアルはドルが下落しているため、2月平均1ドル=3.59レアルが、
4月には同3.12レアルと13%上昇し、4月下旬以降はおおよそ3.0レアル以下で
推移している。これにより輸出競争力が落ち、農業において特に問題となってい
るのは、近年生産が増大し輸出品目として見られるようになったトウモロコシが
供給過剰となり、価格が低下していることである。

 最大生産州であるパラナ州のトウモロコシ生産者価格は、2月に60キログラム 当たり 20.19レアルだったものが、4月には14.3%下落し同17.30レアルとなっ ている。また、大手調査会社によれば、5月下旬のパラナ州のトウモロコシ価格は 同15.30レアルと急落している。収穫後の出荷が始まり市場に供給量が増加する3 月に価格が低下することはあるものの、今回の急落の要因にはドル下落による供 給過剰感に加え、史上最大の生産量予測が影響している。また供給過剰による価 格低下が次期作付面積の減少につながることが懸念されている。
 トウモロコシの国内消費量は、従来CONABが基準としてきた年間3,660万ト ンであったが、今年予想される豚肉(7%増)を中心とする食肉生産量の増加をも とに3,750万トンに見直されている。しかし、今年のトウモロコシ生産量がこれ を大幅に上回ることから余剰分のうち300万トンは輸出されると農務省は予測し てきたが、現在では150万トンの輸出予想に減少し、余剰がさらに拡大している。

オプション契約の契約率が高まる

 これに対し政府は、トウモロコシ価格低下から生産者を保護し、次期作付面積
の減少を避ける手段として農産物販売オプション契約(生産者が生産物を事前に
決められた日に決められた価格で政府に販売する権利を生産者に与える契約、詳
細は畜産の情報2002年12月号p70参照)を実施している。トウモロコシ価格が
高値で推移していた時期は、契約率は20〜30%と大きな関心はなかった。しかし
5月中下旬に政府が実施した契約では、パラナ州等で18.80レアルと市場価格を
上回る価格を設定したことから生産者の関心が高まり、合計80万トンのオファー
に対し、98%の78万トンが契約された。

 ブラジルのトウモロコシ市場は、作付面積および生産量の増加と価格低下、そ の後の作付面積および生産量の減少と価格上昇を繰り返しており、養鶏・養豚経 営における生産コストへの影響が大きい要素だけに、根本的な価格安定のための 政策が望まれている。

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