製品のブランド化が食肉製品の安全性を促進    ● 米 国


食肉製品の自主回収件数および量とも10年前に比べ大きく増加

 米農務省(USDA)経済調査局(ERS)はこのほど、10年前には年間約150万
ポンド(約680トン)の食肉製品の自主回収量が最近では約2,400万ポンド(約
1万886トン)まで増大したと報告している。


 報告によれば、93年から96年におけるクラスT(当該食品の摂取により深刻
な症状を呈す、または死亡する可能性がある場合:腸管出血性大腸菌O157やリ
ステリア菌が検出された時など)に該当する食肉の自主回収件数と回収量の年間
の平均は、24件、約150万ポンド(約680トン)となっている。同様に97年か
ら2000年におけるクラスTの食肉の自主回収件数と回収量の年間の平均は、41
件、約2,400万ポンド(約10,886トン)と回収量で約16倍になっている。


 このような自主回収量の増加要因について、89年からはリステリア菌検査、94
年からは牛ひき肉に対する腸管出血性大腸菌O157検査が実施され、97年にはそ
れらの検査範囲を拡大したことによるFSIS規則の強化を挙げている。また、検査
機器の測定能力が向上したことも寄与していると述べている。


 さらに、96年のFSISによるHACCP制度導入(すべての食肉処理施設はHACCP
制度を導入し、これに基づき病原菌低減を図ること)の規則を制定したことによ
り、各企業がHACCP制度を適切に執行している結果でもあるとしている。


 一方、米疾病対策センター(CDC)が食中毒の感染源などについてより正確に
特定できるようになったこともその要因としている。


消費者はブランド商品に安心感

 消費者は、前述の食肉製品の自主回収量増大などとも相まって、食品の安全性
について重大な関心を寄せている。市場で販売されているいくつかの商品は小売
店が添付するシールによる食品表示しかされておらず、消費者が商品を購入する
際に、例えばハンバーガーパテのように過去食中毒が発生した事例のある場合、
どのパテがどこの食肉加工会社などで製造されたものか判断することが困難であ
る。従って、消費者はそれらの小売店の商品購入を控え、その代わりに、鶏肉の
タイソン、豚肉のスミスフィールドなどといった知名度が高いブランド商品の購
入に傾く。消費者は、ブランド商品はより品質(安全性)が高いと認めているか
らである。一方、商品供給サイド(加工業者など)は、そのような商品であれば
少々高い値段(プレミアム)を付けても購入すると認識している。


ブランド化が食肉製品の安全性を促進

 ブランド化により商品にプレミアムが付くことは企業側にとって好ましいこと
であるが、ひとたび食中毒などが発生した場合、消費者の商品に対する不信感は
急速に拡がることとなる。このため、ブランド商品を持つ企業は、多くの資金を
投入し、その製品の品質と安全性の向上を図っている。ホットドッグの製造業者
であるビルマーフーズ社(98年にホットドッグ製品の自主回収を行っている)は、
98年から2000年の3年間で1億ドル(約116億円、1ドル=116円)以上を製品
の安全性を確保と消費者への信頼回復のためのPRに費やしたとしている。


 また、2002年にERSが行った調査においてもHACCP導入などによる生産コス
トが導入以前と比べ、食肉産業全体で年間約8億5千万ドル(約986億円)増加
したと積算している。



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