◇絵でみる需給動向◇
タイ農業協同組合省によれば、2002年12月のブロイラー生産費は、前年 同期を約18%下回る1羽当たり43.3バーツ(約126円:1バーツ=2.9円)と なっており、第4四半期を通じて前年同期を20%近く下回って推移した。 生産費の約7割を占める飼料費が第3四半期を5%程度下回る34バーツ(約99 円)台で安定的に推移する中、ひな価額は前年同期比55〜60%の大幅な減 少となっており、第3四半期との比較でも40%程度の大幅な下落となってい る。生産費に占める割合は小さいが、薬剤費の減少率も大きく、前年同期 と比較すると約40%の削減となっている。 一方、農家の出荷価格と生産費との差として算出した農家収益は、4月以 降マイナスが続いており、一般ブロイラー農家の経営状況は悪化の一途をた どっていたが、卸売価格が持ち直したことから、10月には回復基調に転じて おり、11月、12月の2ヵ月連続でプラスとなった。農家出荷価格は、3月にEU 向けタイ産鶏肉から抗菌剤の残留が検出されたことをきっかけに、大手イン テグレーターが自社農場および契約農場以外からの鶏肉の調達を手控えたこ とが影響して、同4月に前年同月比22%の大幅低減となって以後、同年9月ま では同23〜30%安で推移してきたが、第4四半期は同17〜20%安程度にまで 持ち直している。
ブロイラーの農家出荷価格は回復基調にあるものの、一般農家の多くは現 在の価格水準維持のため、減羽の動きを見せていると伝えられている。タイ では3月、4月を夏季と称しており、1年で最も暑い時期を迎えることになるた め、減羽と暑熱の影響による供給量のさらなる減少が見込まれている。 一方、養鶏振興協会によれば、2月にオランダで発生した鳥インフルエンザ の影響で約300万羽が処理されており、他のEU諸国でも一部で同様の事態が発 生している影響を受けて、EUでは鶏肉需給がひっ迫基調に転じており、タイ産 鶏肉の輸出価格も回復に向かっている。今後、減羽と暑熱の影響でタイ国内の 供給量が減少すれば、イラク戦争との関係で3ヵ月先までの受注が終了してい る中東諸国向けを除き、輸出余力に影響が出ることも懸念されており、今後の 生産動向が注目される。
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