◇絵でみる需給動向◇
デンマーク豚肉機構連合(DS)によると、2002年の同国の豚肉輸出量 (生体、加工品等を含む)は、前年を3.4%上回る163万625トンとなった。 デンマークはドイツ、スペイン、フランスに次ぐEU第4位の豚肉生産国で あるが、国内生産量の約8割以上を輸出する世界有数の豚肉輸出国でもあ る。 2002年の同国の豚肉輸出量を輸出先別に見ると、輸出量の63.1%を占 めるEU域内向けは、前年に比べて3.5%増の102万9,611トンとなった。 主要な輸出先国は、ドイツ、イギリス、イタリアで、いずれも増加した。 これは、豚肉や肥育用子豚の有力な供給国であるオランダの輸出量が減 少したことが要因の1つとみられる。オランダでは、養豚に起因する環境 汚染を防止するため、豚飼養頭数(養豚農家数)の削減を政策的に誘導 していることなどから、輸出余力が次第に低下している。
EU域外向けも前年に比べて3.1%増の60万1,015トンとなった。EU域外 における最大の輸出先である日本では、2002年8月から豚肉等に対する関 税の緊急措置が発動されたことから、輸出量の減少が懸念されていたが、 2002年の日本向け輸出量は24万3,391トンと前年を5.6%上回る結果となっ た。 これとは対照的に、第2位の輸出先であるロシア向けは、安価なブラジ ル産豚肉に市場を奪われた結果、10万4,495トンと前年を2.7%下回った。
2003年のデンマークの豚肉生産量は、前年に比べて約1%減少するとEU統 計局(Eurostat)では予測している。しかし、DSでは前年並みの生産を維持 するとの見方もある。このような見方からすると、国内市場の小さい同国で は、生産動向が輸出に直接影響することから、2003年の輸出量も、2002年並 みの水準を維持するものとみられる。 EU域外の主要輸出先国での動向を見ると、日本では豚肉等に対する関税の 緊急措置は3月末で解除されたが、その一方で、ロシアでは4月から、豚肉に 対する関税割当制度が開始された。年間40万5千トン(2003年は適用期間を考 慮し33万7,500トン)の割当枠が設定されたが、これは、2002年における同国 の輸入実績見込み数量の7割程度に相当する数量である。EUの食肉関係団体で は、今回の関税割当制度の導入と安価なブラジル産豚肉との競合により、ロ シア市場におけるEU産豚肉のシェアは低下する可能性が高いとみており、デ ンマークの輸出もその影響を完全に回避することはできないものとみられる。 部位や品質・規格等が異なることから、ロシアに輸出できなくなった余剰豚 肉が日本向けに輸出されるとは考えにくいが、間接的に日本市場への輸出圧 力が強まる可能性は否定できない。
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