伯農務省、トウモロコシとソルガムの生産を奨励 ● ブラジル
トウモロコシの生産者販売価格が高騰
ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)によると、2002年のトウモロコシ
生産量は、前年比16.6%減の3,527万トンとなった。これは、生産者がト
ウモロコシより価格が優位である大豆の作付けを選択したことで、夏作の
作付面積が中央南部で大幅に減少したことや、南部の長期乾燥により1ヘ
クタール当たりの収量が減少したことなどが要因となっている。こうした
生産量の減少に加え、通貨安を背景に輸出が急増したことなどから、トウ
モロコシの国内供給がひっ迫し、2002年12月のトウモロコシ生産者販売価
格(パラナ州)は、60キログラム当たり前年同期比で約2倍の20.76レアル
(約706円:1レアル=約34円)と記録的な高値となった。このような高騰
は、家畜飼料原料の約6〜7割をトウモロコシに依存する養鶏・養豚部門の
経営収支に深刻な影響を与えている。
トウモロコシなどの営農融資限度額を増額
こうした中、ブラジル農務省ロドリゲス農相は2月19日、トウモロコシと
ソルガムの生産奨励および取引支援策を発表した。なお、同国では、ソルガ
ムは一般的に、トウモロコシの代替として、高温や乾燥に対しより耐性を持
つ作物として栽培されているが、2002年のソルガム生産量は、約80万トンと
主要作物と比べて少ない。
この発表の中で、生産奨励策の主な内容については、トウモロコシとソル
ガムの生産者に対する義務資金による営農融資限度額を、2003年3月15日まで
に作付けされるトウモロコシに対し、かんがい栽培が60%増の48万レアル
(約1,632万円)、非かんがい栽培が同60%増の40万レアル(約1,360万円)、
また、2003年4月15日までに作付けされるソルガムに対し、かんがい栽培が2倍
の60万レアル(約2,040万円)、非かんがい栽培が同2倍の30万レアル(約1,020
万円)にそれぞれ引き上げることとした。なお、農務省によると、義務資金と
は、農業融資の財源の1つであり、同国では、全国の金融機関は普通預金の25%
以上を農業融資に投入することが義務付けられており、営農融資の財源の多く
がこの義務資金から充当されるとしている。
トウモロコシなどの取引支援策も実施
また、取引支援策として、2003年に収穫されるトウモロコシおよびソルガム
の取引に対する特別融資について、市場価格に近い価格を融資額の算定基準と
する連邦政府貸し付け(EGF)を実施する旨が発表された。融資対象者は、農業
生産者および養鶏・養豚などの畜産生産者(生産者組合を含む。以下同じ。)、
食肉加工業者、飼料業者などである。なお、この融資財源も義務資金から充当さ
れる。
農務省によると、取引に対する融資とは、収穫期に作物が過剰に出回ることを
回避する目的で、トウモロコシ生産者などに対しては、作物の販売好機を待つま
での貯蔵のための融資を、需要者である養鶏・養豚生産者などに対しては、生産
活動に必要な原料購入のための融資を行うものである。
同国では、収穫時の価格暴落リスクの低減を目的として、生産者に生産コスト
を保証する最低保証価格制度があり、農務省は毎年、各作物の最低価格を発表す
る。農務省によると、これまで、前述のような取引に対する融資として、最低価
格を基礎として農産物を担保に融資を行うEGFが実施されてきた。しかし、最低価
格は市場価格とかけ離れることが多いことから、今回の措置では、市場価格に近
い価格を基礎としたEGFが実施されるとしている。例えば、年間売上高3千万レアル
(約10億2千万円)以下の農業および畜産生産者の場合、トウモロコシ60キログラ
ム当たり最高18.00レアル(約612円)、ソルガム60キログラム当たり同12.60レア
ル(約428円)が融資額の算定基準となり、これらの算定基準は最低価格より高い
ことから、より多くの資金が融資に向けられることになる。
ロドリゲス農相は、「こうした一連の施策の実施、穀物部門と食肉部門の連携強
化などによって同国のトウモロコシ、ソルガム生産が拡大し、ひいては、トウモロ
コシの輸出増大も見込める。また、世界の食肉市場におけるブラジルの競争力は現
在も高いレベルにあるが、飼料原料の供給態勢が安定すれば、さらに高まるであろ
う」と述べている。
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