乳業メーカー、乳製品の輸出に向け弾み ● アルゼンチン


政府は、牛乳価格の上昇抑制に懸命

 アルゼンチン経済省および生産省は乳業メーカー5社と、牛乳(普通牛乳)また
はロングライフミルクの卸売価格を2月末の価格に戻すことで合意した。

 アルゼンチン政府は経済情勢悪化の中、インフレ抑制対策を強化し、その1つと
して最低生活費の支出を押さえることは社会の安定、治安の向上にもつながると考
えている。この最低生活費のうち最低食料費の支出増の要因に牛乳の値上がりがあ
る(2003年2月と前年同月を比較:最低生活費は+46.1%、最低食料費は+63.4%、
最低食料費の約1割を占める牛乳は+65.8%(2月の1キロリットル当たり消費者価
格は1.31ペソ(約52.4円、1ペソ=40円))。乳業メーカーは、3月初めに牛乳価格
を6〜8%値上げし、今後3ヵ月間にさらに価格が上昇するであろうと示唆した。

 政府は、牛乳の値上げは最低食料費を押し上げ、多くの人々を貧困に追い込む結
果になると判断し、今回の合意に至った。5社とは、乳製品の多くを輸出しているサ
ンコール、ミルカウ、ベロニカ、モルフィノ、ウィリベルであり卸売価格を2月末の
価格に戻した後、90日間据え置くこととした。

乳業メーカー、牛乳価格の据え置きと交換条件に輸出向け融資を獲得

 この交渉で政府は交換条件として、アルゼンチン貿易投資銀行(BICE)の資金1,070万
ドルを乳製品輸出の融資に充てることを約束した。実際の融資業務はアルゼンチン国立
銀行が行い、乳業メーカー5社が融資細則決定後から12カ月以内にチーズなどの輸出を行
う場合、一般より低い年利10%で資金を調達することができる。今回の措置に対しBICE
総裁は、牛乳価格の抑制もさることながら、「企業は支出を押さえ海外市場拡大を図るた
めにも有利である」と話している。

国内市場を主要マーケットとする乳業メーカーは苦戦

 首都近郊における牛乳・乳製品売上高の5割を占め、歴史的にプライスリーダー的
な役割を果たしてきたマステリョーネ社は本協定に参加しなかった。経済省の提案は
製品の多くを輸出している5社にとっては魅力的なものであったが、製品のほとんど
を国内市場に販売しているマステリョーネ社にとって魅力はなかったからである。ま
たマステリョーネ社は、昨年7月から値上げをしなかった牛乳価格を1月に上げようと
したが、政府の強い要請により他社が値上げする中2カ月間見送った。3月の値上げは
1月に実施しなかった値上げを行っただけで、結果的には他社と同様2月価格に据え置
いていることになるとしている。

 報道によると、「今回の対策によりサンコール社牛乳の国内販売価格は、マステリョ
ーネ社に比較して7%安くなり、その結果牛乳供給の最大手となる。ミルカウ社も市場
に占める割合を向上させ、さらにロングライフミルク(主にモルフィノ社、ウィリベル
社が製造)を協定の対象としたことから、マステリョーネ社の牛乳との価格競争が可能
となり、マステリョーネ社はさらに苦戦を強いられることになる。政府はマステリョー
ネ社に価格交渉のテーブルにつくよう働きかけている」とのことである。

 なお、4月に入りカルフールなど一部のスーパーは、ウルグアイのコナプローレ社か
ら牛乳を輸入し始め、国内牛乳価格の上昇に対抗している。

 牛乳の価格高騰は、2002年以降の大幅な生産の減少と粉乳を中心として牛乳・乳製品
の輸出が好調であったことによるが、乳価の上昇傾向および需要増大は、生乳生産の回
復をもたらそうとしており、数ヵ月以内に供給は改善に向かうと政府は予測している。
しかし、アルゼンチンではこれから秋を迎え雨量が多いと予想され、良質な飼料を備蓄
できない可能性も残しており、政府の予測通りとなるか注目される。

(注)「最低生活費」及び「最低食料費」とは、中程度の活動をする成人男子が1カ月生活する
のに最低限必要な被服費、交通費、食料費などのこと
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