供給過剰により学校給食用牛乳の品質低下   ● タ イ


飲用乳生産量の増加

 タイの2001年の生乳生産量は前年比8.2%増の約56万2千トンで、2000年
の同12.0%増と比べると、伸び率は低下したがここ5年間は順調に増加して
いる。乳用牛飼養頭数も2000年までは横ばい傾向で推移していたが、2001
年は大幅に増加し前年比11.0%増の34万4千頭と一方、輸入粉乳等から低コ
ストで製造できる還元乳生産が増加した結果、国内飲用乳の供給過剰を招
いている。

品質検査の実施

 学童の栄養水準の向上を目的とした学校給食用牛乳(学乳)においては、
還元乳では栄養成分の損失があるため目的を達成できないとして、2001年か
ら全量の国産生乳使用を義務付けているが、不正に還元乳を混入する業者が
現れている。

 農業協同組合省畜産開発局(DLD)は、内閣の承認の下に各地で飲用乳全
般に対する品質検査を行っている。その結果、バンコク西部のラチャブリ県
で同国食品・医薬品管理局(FDA)で定める適正表示義務に反する飲用乳が
発見されたのを始め、低価格で飲用乳を販売している業者の所在地域からサ
ンプルを収集し検査した結果、6業者の製品は品質基準以下であり、これら
業者に対し品質改善の指導を行っている。また、容器に記載された容量に満
たない内容量で販売していた業者も見つかっており、DLDはこれら業者の学乳
取扱契約を停止した。また、DLDは、FDAおよび学乳制度協議会に対し、ルー
ル違反をした製造業者に対し罰則規定を設けるよう要請した。

学校休業期間対策

 タイにおける学校休業期間は主に3月中旬から5月中旬までの2ヵ月間と、10
月の1ヵ月で、最大の学校休業期間を前に国内の大手乳業7社はこの期間中の生
乳をすべて買い取る約束を履行するとしている。同時に大手乳業7社は、政府
に対し、生乳買い取りのための基金を創設するよう求めており、学乳協議会は
これを大手による約束破棄の口実だとして、あらかじめリスクを回避するため
に、政府が生乳の買い入れ措置をとるよう求めている。

 この休業期間中、生乳の供給過剰は1日当たり千トンに上ると言われており、
同国農務次官は税務局および商業登録局と協同で大手7社に対して職員を派遣
し、適切に国内産生乳が使用されているかどうかを確認するため品質検査を行
うとしている。

粉乳類の輸入規制強化

 また、政府は今年1月下旬、国産生乳の供給過剰を解決するために、飲用乳製
造業者と学乳取扱業者に対する粉乳類の輸入割当をカットするとした。これら業
者に対する前年の粉乳類輸入割当は合計8,400トンであったのに対し実績は8千ト
ン程度となっている。ただし、一方でタイはWTO協定に基づき23品目の市場開放
を求められており、脱脂粉乳もその1つに含まれているため、その他の乳製品製
造業者に割り当てをシフトさせる必要がある。なお、輸入割当数量内であれば5
%の輸入関税となる。

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