食品の安全性に対する意識高まる       ● タ イ


2004年を食品安全年と規定

 タイでは輸出品の薬剤残留問題や豚肉に使用される食品添加物の問題など、
食品の安全性に対する消費者の関心が高まる中、タクシン首相みずから2004年
を「食品安全年」と位置付け、来年までに、国産農産物について国際食品基準
に適合させることを目標に掲げ、輸出・輸入農産物に対しさらなる品質管理の
徹底と安全基準の順守を図ることとした。

 また、同国保健省は動物用医薬品および食品添加物の使用に際し厳重な管理
を行うこととし、違法な薬品を販売する薬品店や企業に対する罰則を強化する
としている。

 これまで食品の輸出を管轄してきたのは農業協同組合省(農協省)であり、
今後もその権限は変わらないが、このような経緯のなかで国産農産物の輸出基
準について新たに、保健省が定めることとされた。また、両省の間では使用禁
止薬品に関する新規則を設けることが合意された。

 それによると、薬品輸入業者は食品・医薬品管理局(FDA)の承認を得た業者
にしか薬品を販売することができず、FDAに対し販売実績報告書の提出を義務付
けられることとされた。また、同局は各県の医療・健康担当者に対しすべての薬
品販売店の検査を行うよう指示し、仮に抜き打ち検査で使用禁止薬品が発見され
た場合には当初検査を行った県の担当者はその責任を問われることとされた。

オーガニック・ミート・プロジェクト

 このような食品の安全性に対する健康意識の高まりを受けて、農業協同組合省
畜産開発局(DLD)はオーガニック・ミート・プロジェクトと呼ばれる対策をさら
に推進することとした。ただしここで使われている「オーガニック」という言葉
はその対策内容から食肉の品質や流通時の衛生管理の向上といった、広義の意味
で捉えられている。

 当プロジェクトは2000年より開始され、農場における衛生管理、経営管理およ
び環境保全などに関する基準を設け、これら基準に適合した生産者を認定農家と
することとしている。現在このプロジェクトにより認定された農場は養鶏場が502
件、養豚場が20件となっている。これらはすべて食品企業16社の傘下であり、さ
らに別の企業6社がDLDに対し承認申請を行っている。

 一方で、このプロジェクトでは、食品市場の衛生環境改善にも取り組んでおり、
現在バンコクを中心に179市場が当プロジェクトの認定基準を受けている。

 また、地方のと畜場の衛生条件を改善するために3千万バーツ(約8,500万円、
1バーツ=2.84円)を投入する計画があり、当面の対策としては継続的にと畜場の
衛生条件の検査を行うこととしている。

薬剤残留検査に大学の協力を依頼

 EU向け輸出用ブロイラーで合成抗菌剤のニトロフラン等の残留が指摘され、一時
EUに対してブロイラーを輸出することができなかったが、最近のタイ東部ブリラム
県での検査においても379のブロイラー農場のうち10農場で薬剤残留が摘発されたこ
とから、農協省はこのほど全国22の大学に対し、輸出農産品の薬剤残留検査に協力
するよう依頼した。DLD、水産局および農業局は各大学が適正な検査を行えるかどう
かを確認した後、検査可能な大学に対し検査依頼を行うこととしている。

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