大豆生産者が直面する世界市場と国内政策の変化 ● 中 国


大豆生産量は10年前との比較で6割の増加

 米農務省海外農業局(USDA/FAS)が公表したレポートによれば、中国の
大豆生産の拡大は、市場開放の現われであるが、まだ完全に開放されている
というわけではない。USDAの見通しでは、中国の大豆生産量は、2002/03年
度には、前年比6%増の1,640万トンとされ、10年前との比較では、59%の増
加となっている。

 2001年12月にWTOへの加盟が実現した際、中国がWTOの加盟条件を確実に履
行するとは考えられていなかった。しかし、中国は経済開放に向け、着実に
ステップを踏んでいる。中国では、米国、ブラジルおよびヨーロッパの近代
的で機械を取り入れている農家と競合するためにいっそうの効率化が求めら
れるが、人口の4分の3が地方に住み、その大半が農業を主な収入源としてい
ることから、その収入を安定的に保つことを考慮に入れなければならない。

インフラや制度改革により農業効率の改善を目指す

 「退耕還林」と呼ばれるプロジェクトにより、多くの土地が森林に戻されて
いるが、大豆の単位当たりの収穫量は大幅な増加傾向にあり、これらの土地面
積の減少分を相殺している。黒龍江省の農業部では、2002年に29万ヘクタール
の土地を森林に戻すと同時に、トウモロコシの作付けを制限し、大豆の作付け
の増加を提唱した。また、大豆回復計画と呼ばれる政策により、中国農業省で
は国内の大豆生産量を増加させようとしている。中国は、WTO加盟後、国際市場
における競争力の必要性を十分認識し、5年以内に世界水準の単位当たり収穫量
を実現することを目標としている。なお、2002/03年の世界の大豆収量は、1ヘ
クタール当たり2.38トンであるのに対し、中国は1ヘクタール当たり1.74トンと
なっている。また、大豆回復計画の一環として、農業省と吉林省農業部では、
吉林省における大豆の作付面積を現在の56万ヘクタールから5年後には100万ヘク
タールに拡大するとしている。

 中国では、経済が急激な成長を遂げており、インフラ整備に係る投資が、2002
年の第3四半期までで前年同期比25%増の1,260億ドル、不動産投資についても2
002年10月までで前年同期比30%増となった。急速な経済発展により、農業や農
業を支えるインフラへの投資はさらに増えるものとみられる。

 農業省では、交通機関と市場のインフラ改善も目指しているとしている。ただ
し、これを達成する計画は今のところ不確定である。大豆の輸送量は記録的な増
加となっているが、大量の商品を低価格で内陸の北東の州から市場となる沿岸の
都市部まで輸送するシステムとしては不十分であり、輸送手段の困難に加え、組
織的なマーケティングシステムの不備も挙げられている。

国内生産者のためのさまざまな保護

 WTO加盟により、中国は関税の引き下げという条件を履行しなければならない。
引き下げ後の関税率は、大豆については3%、大豆ミールは5%、そして大豆油は
9%となっている。

 2001/02年(10〜9月)の中国の大豆輸入は2000/01年の1,320万トンを下回る
1,040万トンと推計されている。これは、政府が2002年3月から遺伝子組み換え作
物の安全証明要求を実施し、輸出国との間の調整が不十分であったことから、貿
易業者が取引を控えたためと見られる。安全証明の要求は2004年4月まで暫定的に
実施され、この間、必要条件についての協議を行うとしている。

 政府はさらに2002年1月から2005年末までの間、大豆とその他特定農産物につい
て、鉄道建設基金の免除を決定している。鉄道建設基金は、国内の鉄道網を整備す
るために船主から税を徴収するものである。免除の対象範囲を大豆ミールまで拡大
するかどうかは、現在協議が進行している。

 中国における大豆生産を取り巻く経済環境は複雑で、農業関連のインフラ整備や
輸送費用の引き下げ、輸入制限やその他の経済支援などWTO加盟1年を経て、これら
は中国の大豆生産にとって、いっそうの重要性を持ち、あるいは拡大に有利に働く
とも見られる。
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