◇絵でみる需給動向◇
デンマーク豚肉輸出機構連合(DS:同国のと畜組合の上部団体)は先ごろ、 2003年上半期の同国の豚肉輸出量(製品重量ベース、生体を含む)を公表した。 これによれば、2003年上半期の同国の輸出量は、域内および域外ともに増加し たことから、前年同期比6.9%(5万7千トン)増の87万7千トンとなった。域内 向け輸出が域外向け輸出よりも伸びており、前年同期比8.4%(4万2千トン) 増の54万6千トンとなった。特に、ドイツへは19.9%(3万3千トン)増の20万 トンを、また、イギリスへは12.6%(1万8千トン)増の16万トンをそれぞれ輸 出した。ドイツに対する輸出が増加している要因としては、オランダにおける 豚肉生産が環境対策の実施等により減少し、同国からドイツへの輸出が減少し ているためであり、また、イギリスへの輸出が増加している要因は、国内にお ける豚肉生産の減少が続いていることなどによるものと考えられる。なお、同 国からドイツへの輸出は生体での輸出、イギリスへの輸出については、ベーコ ンの輸出が特徴である。
EU域外の国への輸出では、最大の輸出先である日本への輸出が伸びており、 前年同期比9.1%(1万2千トン)増の14万2千トンとなった。また、米国へは47 .8%(1万4千トン)増の4万2千トンと大幅に増加した。米国への輸出が増加し ている要因としては、国内での生産が減少している一方、日本への輸出が減少 していないことによるものと考えられる。 なお、昨年までは日本に次ぐ輸出先であったロシア向けは、前年同期比35.9 %(2万1千トン)減の3万7千トンとなった。これは、ロシアが今年4月1日から 輸入関税割当制度を導入し、割当枠を2002年の同国の輸入実績(約60万トン) の7割程度の水準(年間45万トン、今年は33万7,500トン)のに設定した中で、 近年、輸出を大幅に伸ばしているブラジルなどとの競争が激化したことなどが 要因と考えられる。
こうした中、米国のベネマン農務長官が9月29日、ロシアとの牛肉、豚肉お よび鶏肉に関する2国間貿易協定に合意したと発表したことは、今後の同国を 含むEUからのロシア向け輸出に大きな影響を及ぼすとみられる。なお、その内 容は、牛肉、豚肉および鶏肉について米国からロシアへの関税割当措置を導入 するものであり、それは、数量割当による低率関税部分と割当を超えた数量に 対する高関税率部分からなっているとされている。このようなことから、米国 の豚肉の生産・貿易動向が、今後のデンマークの豚肉輸出にも大きな影響を与 える可能性があると考えられる。 デンマークは、今後ロシアの豚肉市場の動向次第では、EU域内および日本な どへの輸出を一層伸ばす必要性が生じるであろう。一方で、同国で9月下旬に 「豚コレラ」を疑う豚(結果は陰性)を発見したことに対して示された、適切 に機能したな防疫体制などを販売戦略として、輸出先の一層の多角化を迫られ るであろう。
|
資料:DS |
元のページに戻る