EU農相理事会、人畜共通伝染病監視強化規則を採択
EU農相理事会、人畜共通伝染病に関する2つの規則案を採択
EU農相理事会は9月29日、食物を介して人間に感染する人畜共通伝染病の発
生を防ぐための2つの規則案を採択した。この規則案は、人畜共通伝染病の病
原体の監視体制システムを確立する指令案と、サルモネラ症を最優先とした人
畜共通伝染病の発症を減少させるためのリスク管理に関する規則案である。
人畜共通伝染病は、食物などを介して人間に感染するものであり、サルモネ
ラ菌、カンピロバクターなどの病原体によるものが代表的なものである。サル
モネラ菌による被害については、EU域内で年間16万人の感染例(サルモネラ菌
により下痢、発熱などの症状を示したもの)があり、そのうち約200人が死亡
している。また、当該病気に係る1年間に要する予防対策費用などは、約28億
ユーロ(約3,668億円;1ユーロ=131円)にも上る。
専門委員会からの提言により、規則を見直し
現状の人畜共通伝染病およびその病原体に関する規則は、サルモネラ菌、ブ
ルセラ菌、トリヒナ菌、結核菌の4種の病原体を監視する指令(92/117/EEC)
がある。しかし、そのほかの人畜共通伝染病およびその病原体の監視・調査体
制については、加盟各国ごとに、対応が個別で不十分であった。このような状
況で、EUの公衆衛生に関する獣医政策科学委員会は2000年5月26日、人畜共通
伝染病の増加傾向に歯止めをかけるためには規則を改正し、より厳格な監視体
制を講ずる必要があると提言した。
そこで、EU委員会は2001年8月1日、人畜共通伝染病の監視・調査体制につい
て、現行の指令(92/117/EEC)を廃止し、監視対象とする病原体を拡大して、
動物飼料から食品までの監視体制を確立する指令案と、サルモネラ症を最優先
とした人畜共通伝染病の発症を減少させるためのリスク管理に関する規則案を
公表した。
監視体制を強化し、対象病原体を拡大
今般採択された指令は、加盟各国が、人畜共通伝染病の病原体のモニタリン
グ、食物を介して発生する伝染病の調査、人畜共通伝染病とその病原体に関す
る情報の交換などを行うことを求める内容を規定している。またこの指令で監
視対象となる病原体を現行の4種からカンピロバクター、エキノコッカス、リ
ステリア菌、ベロ毒素原性大腸菌が加わり8種に拡大している。
一方採択された規則は、動物界での人畜共通伝染病の流行を削減させるため
の目標の設定、加盟各国、食品・飼料事業管理者それぞれが実行する管理プロ
グラムの作成、人畜共通伝染病に関連する動物または食品の第3国との輸出入
時の安全性の確保のための方策などを規定する内容となっている。
デビッド・バーン委員(保健・消費者保護担当)は、「この規則は、委員会
が掲げている"農場から食卓まで"という食の安全の確保の方策につ
いて具体的な指針を示している」とコメントしている。
(注)指令とは、達成すべき結果を規定し、方式および手段については、加盟
各国の機関に権限が委ねられるものであり、規則とは、効力がありすべての
加盟国に直接適用されるものである。
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