2004年の牛肉輸入は増加見込み       ● 中 国


牛肉部門の伸び悩みを受け、政府は優遇プログラムを開始

 米農務省(USDA)が公表したレポートによれば、中国における2003年第1四
半期の牛飼養頭数は、前年同期比1.4%増の1億2,480万頭となった。これは、
乳用牛の頭数増によるものである。その他の要因として、政府が食肉備蓄制度
を再開したことも挙げられる。今回は備蓄の形態が冷凍肉から主に生体牛に変
更されており、備蓄の対象数は国内生産量のわずか1%程度と少ないものの、
生産者の増頭意欲を高めていると見られる。しかし、こうした政府の努力にも
かかわらず、国内牛肉産業は伸び悩みが予測されている。

 これは、牛の改良面において、他国に遅れをとっているためであり、枝肉重
量が世界の平均を下回り、生産コストが高くなるという結果が生じている。ま
た、耕作に適した土地が限られていることも挙げられる。急増する人口に対応
するため、耕地は換金作物の生産に向けられ、飼料生産の減少を招いている。

 一方、肉牛農家の大半が小規模経営で、全飼養頭数の70〜80%が家族経営に
よって占められている。このため、家畜疾病を管理することが非常に難しいと
される。すべての牛を対象とした総合的な獣医システムがいまだに構築されて
おらず、中国のと畜、加工部門は開発途上のまま、ほとんどのと畜加工処理施
設が国際的な衛生基準は言うに及ばず国内の基準すら満たすことが出来ないで
いる。

 こうした状況を受け、中国農業省は国家戦略として「Beef Advantageous De
velopment Area program」(2003−07年)を開始した。対象となる地域は、従
来から肉牛産業の中心である中央平原と北東部で、両地域は今後輸入牛肉に替
わる良質の牛肉を生産し、将来的には高品質牛肉の輸出の拡大を目指すとして
いる。しかし、このプログラムがどのくらい時間を要するのか、他国の牛肉と
品質や価格面で競合するのか不明であり、さらに飼料供給に不安定要素がある
ことなどから、見通し可能な将来において、中国の牛肉産業は米国の牛肉輸出
を脅かす存在にはなり得ないとされている。

SARS問題以降再び高まる需要

 牛肉需要の高まりは、2003年第1四半期においてSARSの発生により中断した。
消費者はSARSへの感染を恐れ、ホテルやレストランでの外食を避けたため、4、
5月の消費は激減した。幸いにもSARS問題は長くは続かず、7月には世界保健機
関(WHO)や中国政府による渡航禁止勧告や国内旅行禁止令が解除され、消費
者も外食を再開し、牛肉需要は回復している。2003年第3四半期については、
SARS発生以前の水準まで需要は持ち直し、その後も堅調であると見込まれてい
る。

 2004年についても牛肉消費量は、特に収入が増加し、生活水準が向上した都
市部の消費者を中心に増加すると見られる。そのため、国内生産が伸び悩む一
方で、高品質な牛肉の輸入が引き続き増加すると見込まれている。

輸入は乳牛を中心に大幅増加の見込み

 乳用牛の輸入は、2002年は前年の4倍に当たる11,432頭と大幅に増加し、200
3年上半期についても前年の58%増となっている。これは、収益性の高い酪農
部門と牛群改良への投資のためと見られる。強い国内需要や生体牛輸入に係る
関税が無税のため、2003年、2004年と生体牛輸入は引き続き増加が見込まれて
いる。また、牛肉の輸入についても2003年上半期は前年同期比21%増の5,195
トンとなった。

 輸出について見ると、主要輸出市場である香港向けの需要が縮小しているこ
とや、EUが衛生問題から中国産食肉製品の大半を引き続き輸入禁止すると見ら
れることなどから、2003年は減少が見込まれている。さらに、その他の国にお
いて、どのくらいの間、SARS問題が、中国産製品に対する信頼に影響を及ぼし
続けるのかがいまだに不透明である。

中国の国別生体牛輸入量

資料:中国税関
   HSコード0102.1000、0102.9000

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