◇絵でみる需給動向◇
EUの牛肉介入在庫量は2002年6月から減少し、2003年1月以降は急激に 減少している。7月の介入在庫量(製品重量ベース)は、ドイツやスペイン、フ ランスなど5カ国(他の国は既に在庫がない)合計で前年同月比90.1%減の約 17,200トンとなった(左図3参照)。国別には、ドイツが7,300トン、スペイ ンが5,400トン、フランスが4,300トンとなっている。 96年の牛海綿状脳症(BSE)問題による介入買い入れで97年には50万トン 以上になったEUの牛肉介入在庫量は、98年のロシアへの食料援助向けの放出 などにより、2000年末にほとんど解消した。しかし、2000年10月以降、フラ ンスを中心としたBSE問題の再燃で消費者の不安が増大し域内の牛肉価格が急 落したため、50万トンを買い入れ上限とすることなどを条件とした通常の介入 買い入れが発動された。その結果、2001年から介入在庫は増加し、2001年11 月には約22万4千トンに達した。 EUでは、99年の共通農業政策(CAP)改革により、2002年7月に通常の牛 肉介入買い入れ(注1)は廃止され、その代わりとして民間在庫補助(注2)が 行われることとなった。ただし、セーフティネット買い入れ(注3)は存続し、 その他必要に応じた「臨時的な介入買い入れ」(発動基準は示されず、EU委員 会の判断に委ねられる)が設けられている。 注1:去勢牛、若齢雄牛枝肉のEU平均市場価格が2週間にわたって介入価格の 84%を下回り、同時に当該国・地域におけるその平均市場価格が2週間連続し て介入価格の80%を下回る場合に発動される。 2:加盟国の牛肉市場価格が「介入買い入れ価格」の代わりに設定された「牛 肉基本価格」(1トン当たり2,224ユーロ(約28万7千円、1ユーロ=129円) の103%を下回った場合に実施できる。民間の牛肉在庫に対して、EUが保管費 用を補助する。 3:加盟国の牛肉市場価格が2週連続して発動基準価格である1トン当たり 1,560ユーロ(20万1千円)を下回った場合に発動される。買い入れ数量に上 限はない。
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資料:農畜産業振興機構調べ |
在庫減少の主な要因としては、2002年に入り域内の牛肉消費が回復してきて いることが挙げられる。ドイツ市場価格情報センターによれば、2002年のEU の牛肉消費量は、前年比9.1%増の743万トン(速報値)、1人1年当たりの消 費量は、8.0%増の19.6キログラムとなった。2003年に入っても引き続き、牛 肉消費の回復が伝えられており、EU委員会関係者によれば、2003年の牛肉消 費量は、前年比1.0%増の750万トン近くになると予想されている。 なお、介入在庫は、EU牛肉管理委員会の合意を得て売却される。管理委員会 は、売却に当たり、当該牛肉が域内用か輸出用か、域内用であれば用途指定な しか、加工あるいはひき肉用かを明らかにする。また、管理委員会が決定した 価格、あるいは入札によって売却される。
8月以降も、介入買い入れによる牛肉在庫からの売却は順調に行われており、 このままいけば11月までには在庫は解消する見込みである。ただし、2000年 のBSE再燃による域内需給対策として取られた牛肉特別買い入れ(2001年7 月以降、BSE検査を行った30カ月齢を超える牛肉を各国政府が買い上げる。そ の後の取り扱いは各国の裁量により、廃棄または保管される。)による在庫が 約6万1千トン(その3分の2はフランス)が残っており、8月末から売却な どの処分が行われ始めている。
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