EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○2002年の主要乳製品の域外向け輸出は増加


● ● ● 輸出補助金引き上げが要因● ● ●

 ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、2002年のEUの主要乳製品
(バター(バターオイルを含む)、脱脂粉乳、チーズ)の域外向け輸出は、い
ずれも前年に比べ増加した。バターは前年比19.7%増の21万3千トン、脱脂
粉乳は12.0%増の15万9千トン、チーズは3.2%増の48万4千トンとなった。


 この要因は、2002年の乳製品の国際市況が大いに低迷した中で、EUが輸出
補助金を引き上げたことにある。2002年のバターの国際価格(西欧主要積出港
の船積み渡し価格の各月の単純平均)は、過去10年間で最低の1トン当たり
1,063米ドル(約12万5千円、1米ドル=118円)、脱脂粉乳も最低の1,292
米ドル(15万2千円)となった。一方、2002年のバターの輸出補助金(月別
の単純平均)は、100キログラム当たり180ユーロ(約2万3,000円、1ユー
ロ=129円)となった。また、脱脂粉乳の輸出補助金は、57.3ユーロ(7,400円)、
チェダーチーズは、129ユーロ(1万5,000円)となった。
バターの輸出補助金と国際価格の推移
資料:ZMP、EU委員会

脱脂粉乳の輸出補助金と国際価格の推移
資料:ZMP、EU委員会

● ● ● 補助金付き輸出はWTO協定の上限枠内で実施 ● ● ●

 一方、2002/03年度(7月〜6月)の主要乳製品の補助金付き輸出は、これ
まで通り94年のガット・ウルグアイラウンド(UR)合意に基づく上限枠(数
量・金額)内で実施されている。現在の枠は、UR合意に基づく補助金付き輸出
の削減数量の最終年度(2000/01年度)枠で設定されており、2004年までの
合意が目標とされている現在の世界貿易機関(WTO)交渉が終結するまでは、
その枠が適用される。


 これを見ると、バターおよび脱脂粉乳の輸出数量はそれぞれ現在の枠の70%
以上、80%以上となっている一方で、金額では60%以下となっており、これは
2002年のこれらの国際価格が低迷したことを反映していると言えよう。なお、
チーズは数量でほぼ100%、金額で80%近くとなっている。

2002/03年度のEUの主要乳製品の補助金付き輸出
資料:EU委員会

● ● ●8月末で主要乳製品の輸出補助金は引き下げ ● ● ●

 ZMPによれば、2003年1月から4月までのEUの主要乳製品の域外向け輸出
は、イラク戦争や今年に入ってからの米ドルなどに対するユーロ高の傾向の影
響が懸念されたが、国際市況が回復傾向であることなどから増加した。バター
の輸出量は、前年同期比69%増の11万トン、脱脂粉乳は62%増の15万4千
トンと大幅な増加、チーズは8.5%増の15万4千トンとなった。
 こうした中、EU酪農管理委員会は8月29日、バターおよび脱脂粉乳など主
要乳製品の輸出補助金を引き下げた。バターはこれまでの100キログラム当た
り185ユーロから13カ月ぶりで178ユーロ(2万3,000円)、脱脂粉乳は60
ユーロから57ユーロ(7,400円)、チェダーチーズは122.94ユーロから110.89
ユーロ(1万4,000円)となった。この理由としては、@国際市況の回復傾向
が続いていることA米ドルなどに対するユーロ高の傾向が6月以降一転してユ
ーロ安の傾向となりつつあること−が挙げられる。今後、国際市況の回復が進
み、ユーロ安の傾向が続けば、今年の夏の猛暑による生産の影響が懸念されて
きているが、EUの乳製品輸出は一層伸びることが予想される。


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