EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○2003年上半期の豚肉価格はほぼ横ばい


● ● ●125ユーロ前後で推移● ● ●

 2003年上半期のEUの豚枝肉卸売価格(15カ国の市場参考価格、以下「豚肉
価格」という。)は、ほぼ横ばい(100キログラム当たり125ユーロ(約16,100
円、1ユーロ=129円)前後)で推移した(左図2参照)。

 EUの豚肉価格は、2000年に入り生産が減少し消費が堅調であったことなど
から上昇し、@2000年10月以降、牛海綿状脳症(BSE)問題再燃の影響により、
食肉需要が牛肉から豚肉へシフトしたことA2001年2月にイギリスで発生した
口蹄疫発生により豚肉供給量が減少したこと─などから、2001年3月には194.7
ユーロ(25,100円)に達した。しかし、その後は牛肉需要の回復や豚肉生産量
の増加などから下落し2002年3月は117.2ユーロ(15,100円)となった。それ
以降は、120ユーロ(15,400円)から140ユーロ(18,100円)の間で推移して
いる。

 なお、2003年上半期の価格は、過去3年間で見た場合は低水準と言えるが、
96年のBSE問題発生による代替需要の反動で豚肉が供給過剰となった結果、価
格が大幅に低下した98年(119.6ユーロ(15,400円))および99年(111.7
ユーロ(14,400円))の価格を上回っている。

98年から03年6月までのEUの豚肉価格の推移

● ● ● 牛肉需要の回復や輸出の減少が原因● ● ●

 2003年上半期に価格が上昇せずにほぼ横ばいであった理由としては、まず域
内の牛肉消費が引き続き回復しており、代替需要がほとんどなくなってきてい
ることが挙げられる。EU委員会関係者によると、2003年のEUの牛肉消費量
は、前年比1.0%増の約750万トン近くと予測されている。

 また、域外向け輸出が減少していることも挙げられる。業界関係者によれば、
2003年第1四半期の域外向け輸出量は、前年同期比7.0%減の約36万トンで
あることが報告されている。この背景としては、@上半期に米ドルなどに対し
てユーロ高の傾向で推移したことAEU最大の輸出先であるロシアで、近年輸出
が伸びているブラジルなどとの競争が激化していること−などが挙げられる。
なお、今年の域外向け輸出量(EU15カ国)は、前年比11.3%減の110万トン
と予測されている。

● ● ● 価格は年内上昇しない見込み ● ● ●

 EUの豚肉価格は、例年6月から8月にかけて夏場におけるバーベキュー向け
需要の増加などにより上昇する。8月の価格は、猛暑による肉豚の成育不良(出
荷頭数の減少)もあって、前年同月比1.4%安の134.4ユーロ(約17,300円)
にまで回復した。国別に見ると、EU最大の豚肉輸出国であるデンマークでは7
月以降も下落しているが、他国では上昇している。特に、スペインは150ユー
ロ(19,400円)近くにまで上昇している。

 しかし、EUの豚肉業界関係者で構成される豚肉常設委員会予測グループの需
給見通しによると、年内の価格は上記の理由などから上昇する見込みはないと
している。グループの一部関係者からは、この状況が続けば今後生産者の経営
にも影響が出ることを懸念する声が出ている。ただし、今年の6月以降、為替
は一転してユーロ安の方向に向かいつつあることから、域外向け輸出が回復し
て価格が上昇する可能性は出てきている。

EU豚肉主要国の価格の推移


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