好調が続くブラジルの牛肉輸出


2003年上半期の牛肉輸出は17.4%増

 ブラジル開発商工省貿易局によると、2002年の牛肉輸出量(製品重量ベー
ス。冷蔵肉、冷凍肉、および加工肉。以下同じ)は、前年比17.4%増の57万
8千トンと過去最高を記録した。こうした背景には、安値で推移する自国通貨
の為替動向、放牧肥育による低い肉牛生産コスト、口蹄疫の清浄化の進展など
が挙げられる。

 今年に入っても好調は続き、2003年上半期(1〜6月)の牛肉輸出量は、前
年同期比54.2%増の37万7千トン、同輸出額(FOBベース)は同31.0%増の6
億3,800万ドル(約740億円:1ドル=約116円)となった。

 中でも、生鮮牛肉(冷蔵、冷凍)の輸出量は、前年同期比68.1%増の29万
6千トンと全体の8割弱を占めた。これを国別に見ると、最大の輸出先である
チリが41.7%増の4万2千トン、エジプトが約4.3倍の4万1千トン、ロシアが
同4.3倍の3万1千トン、前年同期の輸出実績がゼロであったイランが2万1千
トン、英国が80.2%増の1万9千トンとなった。

米国による生鮮牛肉輸入解禁を期待

 さらに、ブラジル政府や業界では、米国によるブラジル産生鮮牛肉の輸入解
禁が期待されている。ブラジル農務省によると、米国は2002年、5万5千トン
のブラジル産加熱加工肉を輸入したが、ブラジル産の生鮮牛肉の輸入は衛生上
のリスクを理由に、認められていない。しかし、2003年8月11日付けブラジ
ル農務省プレスリリースによると、米国の衛生調査団が8月上旬に、リオグラ
ンデドスル、サンパウロ、マットグロッソドスル、ゴイアス、およびロンドニ
アの各州を訪問し、食肉処理加工施設、国境地帯、国際港、国際空港などを視
察した。この調査は8月11日に終了したが、ブラジル政府や業界では、同国の
衛生状況や防疫体制について米国から良好な評価が得られれば、米国だけでは
なく、北米自由貿易協定(NAFTA)加盟国のカナダ、メキシコなどそのほか
の衛生条件の厳しい市場への輸出の可能性もでてくるとして、調査結果に注目
している。

 現地報道によると、ブラジル産生鮮牛肉に関する米国との交渉は、99年に
開始されたが、2000年8月にブラジル南部のリオグランデドスル州において
口蹄疫が発生したことから、交渉が中断された。2001年5月にも同州で口蹄
疫が発生したが、2002年に入りブラジル政府が、衛生リスクの分析に関わる
書類を米国政府に送付したことをきっかけに交渉が再開され、同年10月にNA
FTA加盟国の衛生調査団がブラジルを来訪し、衛生状況などを調査した。

政府や業界の懸念材料は、隣国の口蹄疫問題

 米国などによる生鮮牛肉の輸入解禁が期待される一方、政府や業界の懸念材
料として、隣国の口蹄疫問題がある。ブラジル農務省によると、今回の米国の
衛生調査団は、ボリビアとパラグアイの国境付近の監視体制を強化するよう勧
告したとしている。

 同省は、国内の口蹄疫清浄化を図るためには、隣国との共同対策が不可欠で
あるとして、これまで、ボリビアやパラグアイに対し、ブラジルとの国境地帯
を対象にワクチンの寄贈などを行ってきた。しかし、今年7月におけるボリビ
ア南部のチュキサカ県、パラグアイ西部のボケロン県での口蹄疫発生が、ブラ
ジル牛肉業界に大きな不安を与えたことから、同省では、両国の国境地帯のみ
ならず全土を対象とした撲滅対策への協力の必要性が検討されている。



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