輸出仕向けの乳製品増加の兆し ● インドネシア


輸入原材料への依存高まる

 インドネシアでは、98年のUR合意の実施に伴い、85年に開始された国産生
乳と輸入乳製品の原材料としての使用割当(義務付け)による輸入量調整シス
テムを98年に廃止した。また、2000年には生乳・乳製品の輸入関税を5%に
引き下げるなど、国内酪農産業に対する保護政策を撤廃したことにより、国内
乳業各社は輸入原材料への依存度を高めつつある。

 同国では各地方に酪農組合が存在し、これを総括するインドネシア酪農組合
連合(GKSI)が、経済危機以降の国内酪農振興を図ることとされている。

 GKSIは生産者乳価を決定する際、生産者団体として畜産総局と同国内乳業
メーカーとの3者協議をするなどの役割を持つが、近年、国内生産振興の面で
有効な方針を打ち出せず、批判の声も上がっている。

GKSI、乳製品加工場建設を計画

 こうした中、GKSIは7月、組合に属する酪農家が多数存在する中部ジャワ州
に、総額550億ルピア(8億4,700万円:100ルピア=1.54円)を投じて乳製
品工場を建設すると発表した。計画では加糖れん乳を中心に、主に国内消費仕
向けに乳製品を製造し、そのうち24%程度を中東やシンガポールへ輸出する
こととしている。

 同時にこの乳製品工場は1日当たり約140トンの生乳を保管することが可能
な冷蔵施設を備える。当該地域では近年、生乳生産が次第に増加しつつある。
従来、地域内に散在する生産農家と乳製品工場の距離が離れており、輸送中の
保冷が技術的理由や運搬施設の不足から困難であったが、この地域の中心に冷
蔵施設を設置することにより地域内の酪農家から集乳し生乳の品質を従来より
は良好に保てるとしている。

 また、同時に地域内酪農家の衛生管理を改善し、生乳の品質を同国の国家規
格(INS)に近づけ、将来的に生産者乳価を引き上げる効果を期待している。
なお現在、INSに基づく品質基準をクリアした生乳の取引価格は1リットル当
たり1,500ルピア(23円)であり、一方この地域の酪農家の現在の取引価格
は同じく約1,250ルピア(19円)である。同国では、搾乳牛2〜4頭規模の零
細酪農家が全体の9割を占めること、乳用牛の遺伝形質のばらつきがあり、品
質が不均一で生産性が悪いこと、搾乳時の衛生環境がおしなべて良好でないこ
となどにより、これらの生乳を合乳することで、たとえ高品質の生乳を生産す
る農家がいたとしても低水準に平均化され、インセンティブをそいでしまう。

 なお、現在同国の乳用牛の95%はジャワ島で飼養されており、同島は人口
集中地でもあり、利用可能な土地の不足から飼料生産、環境対策の面で問題が
ある。

輸出により収益拡大を目指すネスレ社

 一方、国内乳業大手のPTネスレ・インドネシア社は同月、今年の販売額の
増加率は15%を目標とするとした。東ジャワ州を中心とする同社の乳製品工
場の規模拡大により加糖れん乳を中心とした乳製品生産規模を拡大し、同国の
市場に占める割合の拡大を図る一方、シンガポールやEU諸国への輸出を拡大
するとしている。現在、同社の乳製品生産能力は加糖れん乳が年間20万トン、
粉乳が同10万トンとされている。

 なお同社は、ネスカフェやミロなどの同社の看板商品を製造するスマトラ島
東部ランプン州の工場も合わせて規模拡大し、同国内での販売量を拡げたいと
している。



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