豚飼養頭数は引き続き減少  ● 台湾


飼養頭数は前回調査より0.7%の減少

 米農務省海外農業局(USDA/FAS)が公表したレポートによれば、台湾に
おける2003年の豚肉生産量(と畜頭数)は前年比2%減の970万頭と推計さ
れている。これは、口蹄疫発生後に記録した2001年の1,010万頭に比べると
4.1%の減少となっている。

 2003年の生産量は以下の要因により、引き続き減少が見込まれている。

@ 97年の口蹄疫発生により失った輸出市場の回復は近い将来には見込め
  ない。
A 飼料価格の上昇
B 内臓を中心とした輸入量の増加
C 環境問題に対する圧力とそれに伴う生産コストの上昇
D 農家の高齢化や廃業
E 有効活用するための土地の転用に関する圧力

 また、行政院農業委員会による豚の飼養動向調査(2003年5月末現在)を
見ると、2003年の総飼養頭数は、生体価格高で増頭意欲が強かったものの、
豚サーコウィルス(PCV)の発生により減少している。

豚飼養頭数

資料:行政院農業委員会
豚肉需給表
 

口蹄疫の発生による影響は引き続き

 台湾の豚肉業界が直面している最も深刻な問題は、97年の口蹄疫発生のた
め、輸出先を失ったことである。97年以前は、日本向け豚肉の輸出国であっ
たが、口蹄疫の発生は、輸出の停止と総飼養頭数の3割に当たる豚のと畜費用
など巨額の損失を引き起こした。また、97年には25,300戸あった農家戸数は、
2002年には飼養規模の小さい農家が多く廃業した結果、13,000戸とほぼ半
減した。なお、豚肉の生産は主に屏東、員林、彰化や台南といった南西地域に
集中している。

 台湾では2003年3月、口蹄疫発生の報告が2年間なかったとして、国際獣疫
局(OIE)へ口蹄疫フワクチン接種清浄を申請し、OIEは台湾から提出された
書類を調査した結果、5月22日に台湾を口蹄疫ワクチン接種清浄国と認定した。
しかし、輸出の97年以前の水準への回復は見込めそうもない。

供給量不足から価格は上昇、需要は安定

 生体価格は2003年7月には100キログラム当たり6千台湾ドル(174USド
ル)に上昇し、今後数ヵ月は高値で推移するものと見込まれている。2003年
の高値傾向は、養豚農家の増頭意欲を刺激し、ばら肉や内臓の関税割当枠拡大
による輸入量の増加傾向にもかかわらず、2004年には飼養頭数の増加が予測
されている。この増頭は、2004年後半から2005年にかけて価格の下落を引
き起こすものと懸念されている。

 消費量は毎年ほぼ94万トンから97万トンの間で安定しており、2003年は9
4万7千トン、2004年は96万トンと見込まれている。台湾では、豚肉と牛肉
がそれぞれ代替されることはなく、豚肉価格が変動しても牛肉の需要に影響す
ることはない。牛肉価格についてもまた同様である。国内での豚肉消費量は、
牛肉の10倍とされる。

価格上昇などから輸入量は増加

 国内の生体価格の上昇もあり、2003年の輸入量は4万5千トンが見込まれて
いる一方、2004年は関税率が引き下げられるにもかかわらず、価格の下落が
見込まれていることから、前年を下回る4万トンの輸入と予測されている。W
TO加盟による関税割当枠や国産価格の上昇などから豚肉の輸入は2002年、0
3年と増加したが、全体量として見ると低いままだった。

 その一方で、2003年の内臓需要は強く、これは加工業者がバラエティミー
トの新たな利用方法を開発したことによるとされる。そのため、2003年の内
臓の輸入については関税割当枠を使い切ると見られている。米国のパッカーは
規格を変更して、台湾市場での生き残りを図っている。
ばら肉と内臓の関税割当

 また、輸出については、口蹄疫発生の前年である96年は、日本向けを中心
として、27万トンの豚肉輸出が行われた。発生後、台湾は日本に対し、加熱
処理豚肉の輸出の承認を得ようと積極的に働きかけ、最近になり、日本側がパ
ッカー5社の承認を行ったが、その輸出量はごく少量とされている。

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