EU−メルコスルとのFTA交渉で関税割当などを提案


農業分野で意欲的な内容を提案

 欧州委員会フィシュラー委員(農業および農村開発・漁業担当)は5月24日、農相理事会において、現在行っているメルコスル(MERCOSUR、南米南部共同市場)との自由貿易協定(FTA)交渉に関する最近の状況を説明した。

 これによると、EUは5月21日、メルコスルとのFTA交渉の農業分野において、無税や特恵措置によりメルコスルからEU市場に輸入されている農産物の99%以上の品目についても除外しないとする意欲的な(ambitious)内容の提案を行ったとしている。また、すでにEUに無税で輸入されているものを含めると、メルコスルからの輸入品全体の87%の関税が徐々に廃止されていくこととなる。そのほか残りの品目については、関税率の削減または関税割当により対応することとなっている。

センシティブ品目はWTOとの2段階での関税割当を設定

 EUとしては、食肉、小麦などをセンシティブ品目として挙げており、これらは、関税割当により対応することとしている。

 関係団体などによると今回の提案に係る主な食肉の関税割当量は以下の通り。

 なお、欧州委員会は、関税割当については、今次世界貿易機関(WTO)交渉後の合計数量を設定することとしており、合計数量をこれ以上拡大することはしないと説明している。

(単位:トン)
 
注1:牛肉は高級生鮮牛肉(ヒルトン枠)によるもの
 2:表中のFTAとは、EU−メルコスル間での交渉で設定を行う予定のもの
 3:表中のWTOとは、現在交渉が行われているWTO交渉で設定を行う予定のもの


 今回の牛肉に関する提案について、オーストリア、ベルギー、フランス、アイルランドは、EUの牛肉分野に悪影響を及ぼすと懸念している。

今後の予定

 EUと南米およびカリブ諸国は5月28、29日、メキシコのグアダラハラにおいて閣僚会議を行い、この会議の中で、EUとメルコスルのFTAについて、本年10月の閣僚レベルでの締結に向け議論を進めていくことで合意した。

 両地域間による交渉は、6月7〜11日の間、アルゼンチンのブエノスアイレスで行われた。次回(第15回)は7月19〜23日の間、ブリュッセルで行われる予定である。

◎欧州、世界をリードするプリオンの研究ネットワークを立ち上げ

 欧州委員会のフィリップ・ビュスカン委員(科学・研究開発担当)は5月28日、パリにおいてプリオン病に関する世界をリードする研究ネットワークを欧州に立ち上げることを発表した。この研究ネットワークは、欧州20カ国52カ所の研究所が参加(欧州全体のプリオン研究の90%に相当)し、牛海綿状脳症(BSE)、変異型クロイツフェルトヤコブ病(vCJD)、スクレイピーなどのプリオンが関わる病気について共通の研究を行う。EUはこの研究ネットワークに対して、5年間で1,440万ユーロ(約19億4,400万円:1ユーロ=135円)を予算措置する見込みである。

 この研究ネットワークは、ニューロプリオン(NeuroPrion)と名付けられた。NeuroPrionの研究施設は、フランスの基礎研究および開発研究を実施する公共の研究所であるフランス原子力庁(CEA:Commissariat`a l'Energie Atomique)内に設ける。


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