鳥インフルエンザの復興基金の設立      ● ベトナム


終息宣言後に再発生

 ベトナムでは、高病原性鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ)により、16名の死者が発生するととともに約3千8百万羽の大量の家きんの処分が行われたところである。政府は3月30日に鳥インフルエンザの終息宣言を行ったが、当時、国連食糧農業機関(FAO)が終息宣言は時期尚早と指摘していた。

 その後、4月に南部のメコンデルタ地帯で鳥インフルエンザの再発生が5月に入って確認されたが、発生した施設での処分羽数は200羽程度で、周囲への影響はなかったとされている。

鳥インフルエンザ復興基金の創設

 このような中、政府は5月10日、世界銀行とFAOの援助で鳥インフルエンザの被害復興のための基金を創設すると発表した。

 基金は、その総額が890万ドル(9億7千万円1ドル=109円)で、4万戸の養鶏農家と全国13カ所の種鶏場の種鶏など導入への補助および家畜衛生施設における検査体制の強化と全国ベースの家畜疾病の監視体制の構築を目的とし、6月から活動を始めることとしている。

 農業・農村開発省担当大臣は、この家畜疾病の監視体制に関し、依然として鳥インフルエンザ再発の危険性は去っていないとともに、これまでの政策が生産性の向上を中心に置いたものであり、全国的にまん延する危険のある疾病への対策が十分でなかったとの反省に立ったものとしている。 

 今後は、早期に防疫措置を講じるため、家畜疾病の発生状況を監視するネットワークを全国的なものにする必要があるとともに、このネットワークの運営に当たっては家きんを飼養する企業および個人が参加する必要があり、清浄な種鶏の供給をサポートする体制とするとしている。また、種鶏の輸入と国内での移動は関係当局の厳しい監視の下で行われなければならないとしている。

鳥インフルエンザ用保険の登場

 一方、民間における鳥インフルエンザに対する動きとしては、同疾病用の保険が登場した。これは、4月に南部ドンナイ県の保険会社が養鶏会社に販売したもので、加入した養鶏会社の鶏肉を食べて万が一、鳥インフルエンザに感染した場合には、購入者一人当たり最高1億ドン(70万円:1ドン=0.007円)を支払うというものである。これは、消費者の不安を逆手に取った宣伝行為であるが、一般にも鳥インフルエンザ再発の懸念があることの表れと言える。

飼料価格の上昇が復興の壁

 このように家きん生産の復興が期待される中、生産費の大宗を占める飼料価格が上昇している。

 例えば、米国資本の飼料会社の1月と5月下旬の平均販売価格を比較すると、10%を超える上昇となっているが、飼料業界によると、この原因は家きん生産の回復による飼料需要の高まりよりも、原料の大豆製品などおよび石油燃料の値上がりとされており、今後の生産回復への影響が懸念されている。

◎中国の偽調製粉乳事件への対応

 4月中旬、中国の安徽省内で製造、消費された乳児用調製粉乳が、必要とされる十分な栄養を含んでいなかったために、それを与えられた多数の乳幼児が栄養失調により死亡や病気になった事件が発生した。国境を接していることもあり、ベトナム国内にも同じ製品が輸入されているのではないかとの懸念が生じた。

 ベトナムの衛生当局はこれを受け、5月中旬に流通段階での製品に関し、適正な表示などがなされているかどうかの調査を行った。5月末に発表されたハノイ市での結果は、小分けしたことによる内容未表示の製品が発見されたものの、今回の事件との関連製品は見つからなかったとしている。


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