地方振興策として肉牛導入事業を推進    ● インドネシア


インドネシア肉牛産業の現状

 インドネシア国内の年間牛肉需要量は47万7千トン(2002年)とされ、国内生産牛肉はそのうち73%に相当する34万8千トンとされている。そして残りの27%は生体や牛肉製品として主に、口蹄疫および牛海綿状脳症などの疾病について清浄地域である豪州やNZから輸入されている。

 同国農業省の統計による最近の肉牛飼養頭数は1,100万頭台で推移しているものの、地域ごとにはばらつきがみられ、政府による肉牛振興が盛んな西・南スマトラ州や大消費地ジャカルタに近い中央ジャワ州などでは頭数増がみられるが、スラウェシ島各州や東西ヌサテンガラ州などでは減少している。また、牛肉生産量でみると人口の集中するジャワ島各州でのと畜頭数、生産量が他の地域に比べ突出しており、東西および中央ジャワ州では近年増加傾向にある。ただし、ジャカルタ市では減少しており、生産加工拠点の郊外化の進展が伺える。

 2004年の同国産業貿易省発表の数字によると、今年3月以前の半年間の牛肉価格動向はジャカルタ市内では1キログラム当たり3万6千〜3万7千ルピア(468〜481円:100ルピア=1.3円)で推移しており、全国平均で3万4千ルピア(442円)前後となっている。この間、ブロイラー価格は同1万〜1万2千ルピア(130〜156円)の間で推移したものの、鳥インフルエンザなどによる目立った影響は見られない。地域別で見た同国の年間1人1年当たり牛肉消費量はジャカルタ市内とバリ島が突出しており2003年の速報値ではそれぞれ18および26キログラムで、その他の大部分の地域では3〜9キログラムとなっている。

地方振興策として肉牛導入事業を推進

 同国の牛肉生産振興の最近の状況としては、地方政府による地域振興策としての肉牛導入の取り組み例がみられる。

 例えば西カリマンタン州では2004年に、農業のいくつかの部門を統合し相互に連携しながら地域振興に資するプロジェクトが始動しており、その中の一つに肉牛振興計画が位置づけられている。このプロジェクトでは畜産部門のほかに米作を中心にした作物部門、水産部門などがあり、畜産部門では豪州から1,500頭の素牛を導入して稲わらなどの副産物を利用し、作物部門との連携をとりながら肉牛振興を図ることとしている。

 また、この地域では林業への依存体質と森林の不正伐採が社会問題となっており、このプロジェクトに代替収入源確保のための地域振興策としての側面も持たせたいとしている。

 しかし、このような地方政府による地域振興対策の中には不明瞭な素牛導入価格の設定から地方政府による不正疑惑が指摘されるケースもあり、事業運営の際には透明性の確保による適正な執行が望まれている。

密輸牛肉問題

 同国では従来より、密輸牛肉対策の徹底によって特定疾病に対して清浄である同国のステータスを確保することの重要性が議論されているが検疫現場での摘発が後を絶たず、2月にも、一時輸入を停止した米国産牛肉の不正輸入が摘発されるなど、早急な対応が求められている。

◎インドネシア政府、米国産牛肉の禁輸を一部解除

 同国農業相は5月31日、5月下旬にローマで開催されていた国際獣疫事務局(OIE)年次総会における提言内容にそった形で、BSE発生を受けて発令されていた米国産牛肉の輸入禁止措置を同日付で解除すると発表した。発表によると輸入禁止を解除する対象は低リスク部位のみとし、肉骨粉など特定危険部位を含む製品に関しては引き続き輸入停止措置を継続するとしている。


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