豚肉価格算定検討委員会の発足に合意    ● マレーシア


豚の農家販売価格の大幅な上昇

 マレーシアは飼料原料の多くを輸入に依存しているため、最近の世界的な飼料原料価格などの上昇に伴い、豚の生産コストも上昇し、農家販売価格はこれを反映した形で上昇している。

 1月初め、生体1キログラム当たり3.7リンギ(106円:1リンギ=28.6円)だった農家販売価格は4リンギ(114円)に値上がりした後も上昇を続け、6月初めには5.8リンギ(166円)と、この間に50%を超える上昇を記録している。

 一方、養豚の盛んなペラク州のイポー市での豚肉小売価格は、1月初めに1キログラム当たり8リンギ(229円)であったものが、4月以降10リンギ(286円)と25%上昇し、現在もこの水準を維持している。

 このため、一時は、仕入価格である農家販売価格が低い時には、利益の確保が容易であった食肉加工流通業者も、現在では利益が圧縮され、苦しい状況に陥っており、合理的な価格形成は生産者のみならず、食肉加工流通業者にとっても必要となっている。

価格算定検討委員会の発足合意

 同国では畜産物価格の統制を行っているが、変動する生産費の農家販売価格への反映について、生産者は政府に改善を求めており、政府も関係各省連携による制度改正の検討を開始しているとされている。

 このような中、5月31日、畜産農家協会連合(FLFAM)の養豚部門と全国豚肉販売協会(NPSA)は、農業・農産業副大臣との会合の下で、農家販売価格の合理的算定方法の設定に向けた合同委員会の設置に合意した。

 同副大臣によれば、この委員会は生産者および食肉加工業者から各々5名の代表者によって構成し、同省もお互いの利害調整を行うための常設の委員会とするよう指導するとともに豚肉産業に携わる各分野の公平な利益の確保と消費者の利益が守られるよう検討したいとしている。

 これまでの農家販売価格の決定は、生産者と流通業者の行政の下での交渉によっているが、生産者と流通業者とも自らの意見を強く主張することが通常であったため、結果としてお互いに不満を残すことが多かった。

◎違法成長促進薬の検出問題

 6月9日、同国公衆衛生相が、昨年の5月から今年1月にかけて行った食肉処理場における抜き取り検査により、検査対象の70%以上から使用が禁止されている薬品が発見されており、今後、農場の営業許可取消しを含め、厳しく罰則を適用すると発表した。

 発見された薬品は元来、ぜんそくなどの治療薬として用いられるものであるが、豚や牛の赤身を効率よく増加させる目的で使用が認められている別の薬品の安価な代替品として使用されたもので、マレーシア国内では薬品名ではなく、その薬理作用に関連して「ベータアゴニスト」として称されている。この薬品の人体への副作用としては、吐き気、頭痛、めまい、動悸などがあり、心臓に問題のある場合には死亡の危険性も指摘されている。

 この公衆衛生省の措置に対し、FLFAMの養豚部門の代表者は、永年の課題が解決に向かうと述べ、歓迎の意向を示しているが、現在の養豚農家をめぐる経営環境は、生産費の上昇により、不法薬品使用の誘惑が強まる状況となっている。


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