米国農務省PR/HACCP規則遵守のための投資を調査
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)は6月1日、「食肉・食鳥処理施設における食品安全への投資」と題する調査報告書を公表した。この調査は、米国農務省(USDA)が1996年に定めた病原体減少・危害分析重要管理点監視方式(PR/HACCP)規則の実施のために1996年から2000年までの5年間に食肉・食鳥処理施設に対して行われた投資などについて、ERSがワシントン州立大学に依頼して調査を行ったもので、アメリカ食肉協会(AMI)をはじめとする関連業界団体の協力の下で2001年の初旬に実施された。調査は1725の牛、豚、鶏のと畜施設および処理加工施設を対象に行われ、996施設から得られた調査結果について分析を行っている。施設の規模としては、わずかの労働者が週に1〜2頭しか処理しない施設から1千人以上の労働者を雇用し、年間数百万ポンドを処理する施設まで様々であった。
5年間で約621億円を投資
同報告書によれば、PR/HACCP規則のために1996年から2000年までの間に食肉・食鳥処理施設に対して5億7千万ドル(約612億円、1ドル=109円)の投資が行われたとしている。また、この間にこれと併せて同規則の遵守以外に食の安全に資する目的で3億6千万ドル(約392億円)の投資が別途行われたとしている。
規則の制定に先立ちUSDA食品安全検査局(FSIS)は、規則の実施に伴う業界の負担を年間約5千万ドル(約55億円)と試算しており、今回の調査結果との乖離が大きい。この理由としてERSは、FSISの試算は管理上の経費のみしか計上していなかったのに対し、ERSの調査では規則の遵守に伴う雇用や資本金の増加のための経費についても計上していることを挙げている。ただし、当初のFSISの試算をはるかに上回る投資がなされたが、健康上の利益は投資をはるかに上回るものであったとしている。
PR/HACCP規則遵守のための投資家および消費者の負担はごくわずかに過ぎない
PR/HACCP規則遵守のために年間に要するコストは食肉・食鳥の生産コストの1%に満たないものの、処理コストの1/3に相当する1ポンド当たり1セント(キログラム当たり2.4円)の上昇を招いたと試算している。特殊な製品を製造する小規模施設では部分肉のような製品を製造する大規模施設に比して処理コストが高く、特別な注文に対応した牛部分肉では、コストの上昇は1ポンド当たり2〜3セント(キログラム当たり4.8〜7.2円)であった。このことは小規模施設が汎用的な製品では市場競争力に乏しいことを示している。
投資の対象は施設の規模などにより傾向が異なる
施設がPR/HACCP規則の遵守のために選択した食品安全技術は、施設の規模や市場からの要請の影響を大きく受けている。大規模施設では施設そのものや検査技術への投資が主たるものであるのに対し、小規模の施設では手作業による衛生措置や操業上の調整への依存度が高い傾向にあった。また、輸出関連施設では、非輸出関連施設と比較し、広範な技術に対して投資が行われた傾向にあった。
◎USDA、高リスク牛の報告のためのホットラインを開設
USDA動植物検疫局(APHIS)は8日、BSEサーベイランスの拡大の一環として、起立不能牛、中枢神経系症状を示している牛、死亡牛など高リスク牛の報告のための電話窓口を開設した。APHISでは、サーベイランスへの参加企業に対し、輸送、保管、廃棄などの経費を支援することとしている。
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