家畜のテレビ取引(アルゼンチン)




ひとくちMemo

 アルゼンチンにおいて、2002年5月から家畜のテレビ取引が始まった。まだ始まったばかりであるが、このシステムに一度参加した生産者などからは再度参加したいとの要望があるとのことであった。この取引の利点として、以下が挙げられる。

1 家畜の運搬料は商習慣上・伝統的に販売者(この場合は、生産者となる)が支払うことになっているが、テレビ取引の場合は購入者が負担するシステムとなっている。よって生産者は家畜市場への運搬経費や、もし販売希望価格に到達しなかった場合、家畜を再び農場へ運ぶ経費が不要となる。

2 輸出用の肥育去勢牛を売買する際、普通は電話による口頭での取引だけで実際に牛を見ず、必要な頭数が集まるまで数回〜数十回生産者に電話することが多い。しかしこの取引の場合、牛をテレビで見て確認し、必要な頭数をこの取引に一回参加しただけで手配できる。


 「農場博物館」の入口。テレビ取引は、リニエスル家畜市場(畜産の情報2000年8月号p73、74を参照)の手前にある農場博物館の1室を借りて競売が行われる。
 テレビ取引を主催しているCAMPOS y GANADOS S.A.(以下、「CAMPOS社」)の社長(左)とセリ人(右)。社長が行う牛群毎の説明(頭数、平均体重、決済方法)が終わった後に競りが始まる。
 セリ風景。買手は対象牛群(ロット)により食肉パッカーやフィードロットオーナーなどになるが、会場に直接足を運んでいる者とテレビ中継を見て代理人を通じてセリに参加している者がいる。初取引は2002年5月12日で、全部で24ロットを競売した。

 プログラムの表紙とロット紹介のページ。競売の部門は、1.輸出用の衛生証明書等がある肥育去勢牛および雌牛(ともにと畜用)、2.肥育素牛および妊娠保証付き雌牛(初妊牛以外も含む)の2つで構成されている。
 【1.輸出証明書付き肥育去勢牛の決済方法の例】と場牛の場合、(ア)と畜後24時間以内に清算する方法、(イ)ロット毎に決まっている期限において決済する方法がある。(イ)の方法は、CAMPOS社が販売者(=生産者)に販売額を補償する形で介在し、購入者がCAMPOS社に購入額を振り込み、販売者がCAMPOS社から販売額を引き落とす。なお決済期間はと畜日から起算する。CAMPOS社は販売者から5%、購入者から1%の手数料をそれぞれもらう。
 【2.肥育素牛の例】肥育素牛の決済方法は、前述の(イ)の決済方法であるが、決済期間は牛の受渡日から起算する。

 (例:決済期間が30日の場合、購入者は25日以内にCAMPOS社に決済し、CAMPOS社は残り5日以内に販売者に対して決済する。購入者から期限内に入金がなくても、CAMPOS社は販売者に支払う契約となっている。)


ブエノスアイレス駐在員事務所 犬塚明伸、玉井明雄

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