北島と南島から成るニュージーランド(NZ)の酪農の中心は、従来、土地が平坦かつ気候が穏やかで牧草の生育に適した北島とされていた。
しかし、80年代に入ると北島での農地開拓はおおむね終了したことから、政府の補助政策などにより南島でのかんがい施設の整備が進んだ。
このため、南島でも年間を通じた放牧が可能となり、ここ数年間、南島における酪農は目覚しく伸展している。 NZの家畜改良公社(LIC)によると、2002/03年度(2002年6月〜03年5月)における経産牛の飼養頭数は374万1千頭と前年度比1.3%増となった。 前年度は同6.0%とかなりの伸びを示しており、2002/03年度も前年度に引き続き増加したため過去最高の飼養頭数となった。NZの経産牛飼養頭数は、 90年代以降、国際的な乳製品需要の高まりを背景に増加傾向にある。これを地域別にみると、ここ最近南島での増加が著しく、 この10年間で飼養頭数は3.4倍になっている(図1)。
● ● ● 酪農家戸数は依然として減少 ● ● ●一方、酪農家戸数は前年度比3.7%減の約1万3,140戸となった。70年代後半には1万7千戸近くあった酪農家戸数は徐々に減少しており、 90年代に入るとほぼ横ばいで推移し減少傾向に歯止めがかかったように見えたが、1997/98年度以降再び減少している。2002/03年度の全酪農家戸数のうち82.7%が北島で占められているが、北島のほぼ全地域で酪農家戸数は前年度より4.6%の減の10,865戸、 南島では同0.8%増の2,275戸となっている。
● ● ● 南島での規模拡大続く ● ● ●また、1戸当たりの飼養頭数をみると70年代後半から一貫して拡大基調にある。特に1992/93年度以降は年率平均5%のペースで拡大が進んでおり、 2002/03年度の1戸当たりの経産牛飼養頭数は前年度より14頭増の285頭となった。これは20年前の約2倍の数値である。 地域別にみると、北島はこの10年間で年率平均約3.7%のペースで拡大しているが、南島はその倍の同8.5%のペースで拡大している。放牧主体であるNZの酪農は、労働力、設備投資、飼料コストなど酪農に求められる負担を極力抑えた生産構造となっている。 南島は、放牧条件さえ整えば規模拡大を行いやすい環境にあるといえ、今後も南島を中心としてNZの酪農規模は拡大すると考えられる。 |
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