1.はじめに世界貿易機関(WTO)では、どの国に対しても同様の条件で関税など通商規則を定めること(最恵国待遇)が原則であり、 関税削減等市場アクセスをはじめ国内支持、輸出規律について交渉を行う。しかし、2005年1月を交渉期限とする農業分野の交渉は、 2000年3月に開始されて3年半が過ぎたにもかかわらず、未だに農業モダリティを確立できず、米国と欧州による共同提案も出されたが、 発展途上国の抵抗など多くの問題を抱えて平行線のまま未だ終結を見ない混とんとした状況となっている。一方、自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)は、協定構成国のみを対象として、排他的に関税の撤廃等(特恵待遇)を実施する仕組みなので、 GATT第24条により、構成国間の「実質上すべて」の貿易について関税や制限的通商規則を廃止することを条件に、 WTOの基本原則である最恵国待遇の例外扱いとすることが認められている。同条の解釈に係るWTO加盟国の共通了解事項として、 関税等の撤廃は原則として10年以内に行われることとされている。 ただし、同条の「実質上すべて」については明確な国際基準が存在しないこともあり、既存のFTAには農畜産物をはじめとする例外品目 (除外品目や再協議(先送り)品目)が設けられている。 WTOに通報されたFTAは、WTO農業交渉の先行きが不透明の中、1990年に30、2002年に179と増加している。今回は、既に締結済みのFTAの中で、 畜産物にスポットを当てて、協定の例外品目の取り扱いを報告する。
2.米国-ワシントン駐在員事務所 犬飼 史郎、道免 昭仁1 米国のFTAにおける例外品目の現状米国は、1985年に発効したイスラエルとの自由貿易協定をはじめとし、カナダ(1989年発効)、 北米自由貿易協定(NAFTA、1994年発効)、ヨルダン(2001年発効)、シンガポール(2003年5月調印)、チリ(2003年6月調印) と6つのFTAを結んでいる。今回は、発効から10年目を迎え、その後米国のFTA交渉の模範とされてきたNAFTAのうち米墨合意を中心に、 また、本年合意に至った米・チリFTAについて取り上げ、畜産物に関する経過措置の合意内容等を概説する。 (1)NAFTA NAFTAのうち農畜産物部分は、それぞれの国の異なる事情を反映し、3つの2国間協定により構成される。基本的には、 すべての関税、関税割当(TRQ)を15年間で完全撤廃することとされている。米国・メキシコ間では畜産物の例外品目はないが、 カナダ・メキシコ間では、鶏肉、七面鳥肉および乳製品が自由貿易協定の対象外とされている。 米国・メキシコ間での関税撤廃までの間の経過措置は、次のように定められている。 (2)米・チリFTA 本年6月に調印された米・チリFTAは、前月に調印された米・シンガポールFTAとは異なり農産品の貿易に直結するものである。 このため、例外品目はないが両国ともに畜産物について経過措置を設けるとともに、鶏肉の動物検疫問題については、 引き続き問題解決を図っていくこととされている。
一方、この協定締結の際には、関税の削減スケジュールなどを決めず、一定の期間(協定発効3年)以内(2003年まで) に再度検討することとしているものがあり、これらをカテゴリー5に分類している。 EUが「再協議品目」と規定しているメキシコ産の畜産物は、生きたウシ科の動物(繁殖用純粋種を除く。)(関税分類番号010290)、 牛肉(同0201、0202)、牛肉加工品(同021020)、豚肉(同0203)、豚肉加工品(同021011から021019)、家きん肉(同0207)、 乳製品(同0401から0406)のほとんどのものがこの「再協議品目」に分類されている。 メキシコが輸入するEU産農産物に係る関税の削減スケジュールの分類もEUと同じである。また、EUの場合と同様に、再協議品目を設定しており、 畜産物ではうさぎの肉やかえるの脚などを除くほぼすべての食肉、ほぼすべての乳製品、 家きんの卵といった具合にほぼすべての畜産物を再協議品目としている。 また、EUにおいては、低率の関税(一般の場合の半分)を適用する枠を設けるもの(カテゴリー6)(乾燥卵黄など)や、 加工農産物のうち原料となる農産物への関税の削減状況などに応じて関税の削減を決めるもの(カテゴリー7)(ヨーグルトの一部)もあるが、 メキシコ側もEUと同様にカテゴリー6および7といった分類はあるが、区分に分類している畜産物はない。 2 除外品目および再協議に至った経緯 EUは、EUの共通農業政策(CAP)上重要な作物や畜産物を再協議品目である「カテゴリー5」に分類している。 これは、CAP上重要な作物については、一般的に価格競争力に乏しいものであり、これらの作物等に係る国境措置を撤廃することは、 地域内におけるこれらの農産物の生産に多大な影響を及ぼすこととなると考えたためと考えられる。また、国境措置を撤廃した上で、 域内の農業生産を維持するためには、CAPの大幅な変更をすることが不可欠となるが、CAPの大幅な変更を行う考えが当時なかったためと考えられる。 3 問題点等 EUとメキシコのFTAにおいては、先述のように、畜産物の多くのものを再協議品目とした。このため、EU域内の関係者からの反発はなかった。 4 今後の交渉予定と進捗状況等 EUは南米南部共同市場(MERCOSUR)諸国(ウルグアイ、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ) とのFTAの締結に向けた交渉を1999年から始めており、これまでに10回を超える交渉が行われてきた。今後は, 2004年10月の閣僚レベルでの交渉に向けて、市場アクセスについての議論などを精力的に行う予定となっている。 さらに、EUは中東の湾岸協力会議(バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦) との貿易拡大を目的とした交渉を1990年から行っているが、湾岸協力会議側の準備不足等から交渉が進んでいない状況にあり、 湾岸協力会議における共通の関税機構の準備等が必要であることなどから、EUが湾岸協力会議とFTAを締結するためには、 今後さらに数年はかかる模様である。 4 オセアニア-シドニー駐在員事務所 粂川 俊一、井上 敦司1 豪州のFTAにおける例外品目の現状現在までのところ、豪州はパプアニューギニアとの通商連携(TCR)協定、ニュージーランド(NZ)との経済緊密化(CER)協定、 シンガポールとのFTAを締結している。その中でもNZとのCER協定は、両国間の歴史的な生い立ちを含めた政治経済関係から重要な協定と認識されている。 その歴史も長く、今年(2003年)は発効から20年という節目の年でもあった。 現状において、豪州・NZCER協定における畜産物に関する例外品目はないが、参考まで当初の協定の概略を記す。 ○ 豪州・NZCER協定:1982年調印、1983年発効 基本事項 1 二国間で貿易されるすべての商品について、1988年1月1日までに事実上すべての関税を撤廃すること 2 5%またはそれ以下にすべての商品の関税を即時撤廃すること 3 協定締結当初から5年間、合意された方式によって関税を段階的に削減すること 4 関税枠や数量制限を増加させないこと 5 数量制限を1995年までに段階的に廃止すること 6 両国間における貿易品目上の補助金や奨励金を1987年7月までに廃止すること 例外事項 原則的にすべての製品、サービスは対象となることが合意されたが、関税や数量制限の撤廃等が免除されるなどの一般原則の例外も設けられた。 例外が設けられたのは、豪州、NZそれぞれの政府による既存の産業計画の対象となっていた物品 (衣料品、自動車、たばこ、家具、鉄鋼、ゴム製品、電子機器、衛生陶器など)やラジオ・テレビ放送、郵便サービス、沿岸海運・船内荷役、 テレコミュニケーション、健康・第三者保険、空港管理、航空管制などである。 2 除外品目および再協議に至った背景 豪州・NZCER協定において、農産物は、ほとんどの品目で関税や数量制限が撤廃されたが、一部の品目についてこの協定の一般原則を 緩和する例外措置が設けられている。協定締結当初においては、畜産物では除外品目扱いではないが、乳製品について例外措置が設けられていた。 CER協定が実施される以前から、豪州の酪農業界はNZとの乳製品の自由貿易について懸念を抱くとともに、 より効率的であるとされていたNZとの競争を余儀なくさせられることになる自由化に強く反対していた。したがって、 この協定で影響を受ける産業の一つとして酪農業界が予想されていた。 そのため、両国の酪農産業界は協議のための委員会を設置し、乳製品貿易の取り扱いについて交渉が行われ、 両国の当該産業は協定の付属書として覚書を締結し、おおむねCER協定の規定内で事業を行うことで合意した。 この覚書において、協議のための委員会が両国の酪農政策に関する情報交換の場として定期的に開催されることや、 協定で規定されるSG措置を移行期間に適用することができる旨が明文化された。 このSG措置については、両国の産業の混乱を防ぐことから、CER協定の総則において規定されたが、 乳製品のようなセンシティブ品目については、NZからの輸入急増に備え、覚書の中でも相互に認識する必要があった。 この救済措置が設けられたことから既存の割当枠や関税はCER協定に基づき廃止され、関税はゼロにまで引き下げられることとなった。 1988年のCER協定の見直しにおいて、1990年までにすべての商品は関税ゼロになるよう、 当初の計画より早くこの協定の積極的な展開と前進を図るため、協定のすべての付属書に関する交渉が行われた。 乳製品の協定の付属書(覚書)も廃止され、1990年からCER協定の規定に基づくことになった。 以上のように豪州・NZCER協定において、乳製品貿易は、1983年から1990年までの間、 協定に付随した覚書に定められた事項に基づき実施されていた。 セーフガード措置 移行期間においては、協定の第17条でセーフガード(SG)措置が規定された。ただし、 最後の手段としてのみSG措置を実施することができることとなっている。国内産業を脅かしたり、 深刻な実質的損害が生じるまで輸入量が増加した場合には、両国間の協議を要請することができる。 要請を受けたときは、SG措置の適用を回避するため双方の条件を満たす解決策を求めて協議を行い、 双方の条件を満たす形での意見の一致が見られない場合、国内産業が脅かされている側の国は、調査や報告、 適切な措置の提案を求めるために産業諮問機関へ当該問題を付託するものとなっている。 3 効果 このように、2国間だけでなく多国間交渉でもセンシティブ品目として扱われることが多い乳製品については、 豪州・NZCER協定でも特別の配慮がなされた。 この間に豪州では、1986年に当時のケリン第一次産業大臣によって国際競争力の強化を図るべくケリン・プランが策定された。 その後、クリーン・プランを経て、最終的な規制緩和政策の仕上げとして2000年に酪農乳業改革が実施され、 豪州の酪農乳業界では今日まで相当な合理化が行われた。 規制緩和を成し遂げた豪州の業界関係者は、現時点では豪州・NZCER協定について、 世界で最も効率的なNZの酪農乳業との競争が豪州酪農乳業の成長の一因であると総じて積極的な評価を行っている。 結果論ではあるが、ケリン・プラン策定のタイミングとの相関から考えると、 一定期間の例外措置の導入が豪州といえども効果的な役割を果たしたとも言える。 4 今後の交渉予定と進捗状況等 豪州のFTAについては、前述したもののほか、タイとのFTAが2003年10月に合意し2004年締結予定となっているほか、 米国とのFTAが現在交渉中という状況である。 タイとのFTA合意において、畜産物では乳製品と牛肉が豪州側の恩恵を受ける製品として挙げられており、 中でも酪農業界は歓迎の意を表明している。ただし、全国農業者連盟(NFF) は両品目に代表されるセンシティブな農産物が除外されなかったことを評価する一方、 両品目の関税撤廃期間が長期にわたることについて失望したとコメントしている。 注目を集める米国とのFTA交渉については、2002年11月に交渉開始が合意され、2003年3月から現在まで5回の会合が実施された。 交渉開始に至るまでも、米国側から豪州の検疫措置などについて問題視されるなど懸念材料もあったが、 特に農業分野については市場アクセス改善に期待感が強く、総じて豪州側は米国とのFTAに向けて積極的な業界が多かった。 米国とのFTAに関しては、豪州国内で次の利害得失正反対の調査分析レポートが存在する。 (1) 民間調査機関の国際経済センターが豪州連邦政府から委託されて2001年に発表した「豪州・米国自由貿易圏による経済的影響」レポート ・ 総じて両国に積極的な経済効果があり、第3国にとっても市場機会の創設につながる。 ・ 大きな利益が見込まれる農産物としては、乳製品、砂糖、牛肉、ワインなどが挙げられており、 乳製品については、関税割当制度や関税の廃止で豪州産乳製品に対する需要が354%も増加する。 ・ 一方、その影響で豪州産乳製品がアジアから米国市場にシフトした分の輸出の幾つかをNZが獲得する。 (2) 民間コンサルタント会社ACILが地域産業研究開発公社(RIRDC)から委託されて2003年に発表した 「豪州・米国自由貿易圏構想における豪州農業展望」レポート ・ 豪州連邦政府が年間40億豪ドルの利益増を主張しているのとは逆に、経済的には赤字をもたらす。 ・ 要求の少ない米国が交渉の主導権を握り、農業分野がほぼ除外されるといった条件が明らかになれば、豪米関係は改善するどころか悪化する。 ・ 日本と中国からの反発も予想され、豪州の米自動車、服飾産業に対する優遇措置に不満を持った両国が、 豪州産の牛肉や羊毛の輸入制限を行う可能性も考えられる。 ・ 輸出先として55%を占める東アジア諸国と10%の米国との比較上の観点から、 米国とのFTAにより豪州がアジア圏の自由貿易構想から除かれる恐れがある。 このほか、最近の報道によれば、国際通貨基金(IMF)の研究者による調査で、豪米間の関税障壁が撤廃された場合、豪州からは、 穀物、食肉、乳製品を中心に輸出額が増加し、米国からの輸入も増加するが、日本などからの輸入が減少し、 結果として豪州の国内総生産(GDP)は0.03%減少するため、豪・米FTAは豪州経済にとってマイナスの影響がある旨レポートされた。 なお、米国経済に対する影響はほとんどないという。偶然かもしれないが、 構想段階から交渉段階にかけて時間が経過するほど豪州にとってあまり成果がないのではないかというような 分析結果が目立つようになってきている。 10月下旬、ブッシュ大統領の訪豪で年内合意に向けた加速がついたとされているが、同大統領とハワード首相の非公式会談において、 米国の農産物の関税について数年にわたり徐々に削減する段階的実施の可能性について話し合われたとの報道もされている。 しかし、ハワード首相は最近の発言において、米国が農業分野で大幅な譲歩に同意しない限り協定を締結しないことを強調しており、 12月第1週に最終といわれた5回目の会合が開催されたが、合意には達していない。 5 東南アジア諸国-シンガポール駐在員事務所 斎藤 孝宏、木田 秀一郎1 アセアン諸国のFTAと畜産物例外品目の現状
先に述べたように、タイはFTAを戦略的に位置付けることにより自国の経済全体を発展させること目的としているものの、 FTAの相手国の中でも豪州は農業大国であり、急激な畜産物の国境措置の撤廃は、 小規模農家が多く存在するタイにとって非常に大きな打撃を与えることとなる。 特に肉牛、乳牛および豚を飼養する小規模農家にとっての影響は大きく、直ちにこれらの関連品目である牛肉、 豚肉および乳製品の関税を撤廃した場合には、農業経営が存続できない状況も容易に想定される。 (3) 問題点等 FTAに対する政府機関および関係業界団体の反応は次のとおりである。 (1) 農業組合省農業経済局等 農業組合省農業経済局の担当者は、関税撤廃までのスピードが速ければ、その影響は小規模の生産者のみならず大規模生産者にも及ぶので、 関税の削減は慎重に行う必要があることを認識している。一方、 生産者は生産物への付加価値を高めることによって競争力を持つことを期待しているが、 米国のような競争力を持つ国には及ばないとし、非関税障壁の問題も大きいとしている。 また、別の政府関係者は、FTAの実施により飼料等の原材料コストの引き下げがなされることにより、 生産コスト全体の引き下げに働くとの見方も示している。 (2) タイブロイラー加工輸出協会 大手ブロイラー企業の団体である本協会は、タイのブロイラー産業は他の米国やブラジルの輸出国と比べると規模的に小さく、 飼料の一部を輸入に依存しているため生産コスト上の競争力は乏しいが、付加価値と生産性によって競争している。今後、 FTAの拡大により米国との競争にさらされるが、米国企業には、生産と輸出振興への補助がなされており、競争上の公平性に欠ける。 また、米国は衛生問題を理由にタイのブロイラーを拒絶している。タイ政府は、FTAの交渉について、 関税や輸入枠の撤廃のタイミングだけを考えるのではなく、非関税障壁に関しても検討してもらいたい。 タイは米国から大量の飼料原料やワクチンを輸入しており、タイのブロイラー産業が衰退した場合、それらの輸入が減少することを考え、 双方にメリットのある関係を築くべきであるとしている。 (3) 政府系乳業企業関係者 政府系乳業企業関係者は、タイと豪州のFTAによって小規模の酪農家には悪影響が出て転職を余儀なくされることとなる。 タイの多くの酪農家の規模は小さく、収益性も非常に低い一方、豪州の乳業は生産量、 生産性の高い経営そして安価な飼料価格によりタイの乳業をはるかに超えており、競争する状況ではなく、 小規模畜産農家は安い輸入原料で生産を行う食品加工業で働かざるを得なくなるのではないかと、状況を厳しく認識している。 6 南米-ブエノスアイレス駐在員事務所 犬塚 明伸、玉井 明雄1 メルコスル(南米南部共同市場)における例外品目の現状 2 チリにおける例外品目の現状
生鮮牛肉を即時関税撤廃の対象から除いた理由をチリ外務省経済交渉部FTA担当者に質問したところ、 「チリは牛肉の輸出大国になるとは思っていないが、牛肉の輸出促進を最近始めたばかりなので、 国内の畜産振興のため関税の即時撤廃とはしなかった。しかし、韓国の牛肉は高価なので輸入が極端に増えるとは考えにくいし、 当該関税率も低いので関税を10年後に撤廃しても大きな影響はないと見ている」との回答であった。 (3) 今後の交渉予定と交渉経緯 韓国国会が動き出したら、チリ国会も協定承認に向け審議を再開する予定である。韓国次第の状況となっている。 (2)米国とのFTAについて (1)例外品目の現状 2003年6月6日、チリと米国はFTAに調印し、チリは8月26日から国会下院の特別委員会で審議が開始され、 10月22日に上院を通過し、12月4日大統領が署名した。ちなみに米国も9月3日に大統領が署名しているので、 両国間の自由貿易は2004年1月1日から開始される予定となっている。なお、当2国間の協定には除外品目は存在しない。 (2)例外品目および再協議に至った背景 チリが米国から輸入する品目のうち関税が即時撤廃されないのは全部で562品目あり、 そのうち農産物等関連製品は259品目で、畜産物関連製品では (ア)牛肉製品関係で11品目 (イ)鶏肉および七面鳥製品関係で13品目 (ウ)酪農製品関係で37品目 (エ)鳥卵製品関係で5品目と合計66品目なっている。 上記のうちチリがセンシティブ品目として挙げた (ア)では、生鮮牛肉(現行関税6%)、 (イ)では生鮮鶏肉パーツ(現行関税25%)、 (ウ)では牛乳・クリーム・粉乳などの乳製品(現行関税6%) について自由化プロセスを紹介する。 (ア) 1年目の無税の関税割当1,000トンを毎年10%ずつ増やしつつ、関税は均等に削減し4年目に自由化。 (イ) 現行関税を2年間据え置いた後、3年目から無税の関税割当枠8,000トンが始まり、毎年5%ずつ増やしつつ、 関税は均等に削減して10年目に完全自由化。 (ウ) 関税は8年間で均等に削減。 なお、鶏肉および乳製品等を即時関税撤廃の対象から除いた理由をチリ外務省経済交渉部FTA担当者に尋ねたところ、 「鶏肉は両国にとってセンシティブ品目であり、乳製品はチリにとっていつでもセンシティブな品目であるため」 と簡単明瞭な回答が返ってきた。
米国との間には、鶏肉輸入をめぐる覚書が存在している。このペーパーには 「鶏肉製品貿易について相互の利益を図るために技術・科学的な作業を鋭意進めていく」 とあり具体的な記述がないため、チリ外務省経済交渉部FTA担当者に確認したところ、2国間の衛生条件が異なっているので、 今後衛生条件の同一化に向けた検討を実施していくことが約束されているとのことであった。 |
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