EU委員会、中・東欧等10カ国のEU加盟にはさらなる努力が必要と報告


加盟に向けた準備状況の総合的監視レポートを発表

 EU委員会はこのほど、来年5月に予定されている中・東欧等10カ国のEU加盟に向けた準備状況の総合的監視(monitoring)レポートを発表した。新規加盟国は、アキ(acquis)と称されるEU創設にかかわる諸条約を基に採択された詳細な法律や規則を受け入れ実施しなければならない。今回のレポートによると、新加盟国が2004年5月1日のEU加盟に向けた法体系の条件整備はおおむね整っているとしている。しかし、まだ加盟国として完全な恩恵を享受するために法体系の整備を急がなければならない問題について、具体的に指摘を行っている。

9月30日までの取り組み状況を3段階で評価

 EU委員会が今回発表したレポートは、2003年9月30日現在での新加盟国のEU加盟に向けた物や人の自由な移動、会社法、競争政策など29の分野での法体系の整備状況について評価したものである。これらは、加盟のための指導となるものとして位置付けられている。このレポートは、29の各分野でのそれぞれの法律や規則について、 (1)若干問題がある事項があるものの、加盟に向けた準備が既に整っているもの (2)準備のペースを上げる必要があるもの (3)即座に準備に取り組む必要があるもの−の3段階で評価(分類)をしている。もし、新加盟国が加盟までに法体系を整備できなかった場合は、その加盟国はEUとしての完全な恩恵を享受できないこととなる。

農業分野でも準備を急ぐ必要あり

 29の分野の一つである農業分野においては、共通農業政策(CAP)の適用は、ほとんどの国でおおむね完成しているものの、さらなる努力が必要であるとして、上記の (2)、 (3)に評価されたものは以下の通りであった。

○ 準備のペースアップを必要とするもの
・ 特定の農産物をEUの共通市場に出荷するための体制整備
 牛乳-バルト3国(リトアニア、ラトビア、エストニア)、ポーランド、スロベニア
 牛肉-チェコ、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロバキア
 鶏卵・鶏肉-ポーランド
・ 直接支払いの算定に必要となる総合実施管理システム(IACS)等の確立-チェコ、バルト3国、ハンガリー、ポーランド
・ 有機農業に関する規則の整備-マルタ
・ 農村開発対策への資金確保-マルタ、ポーランド
・ 伝達性海綿状脳症(TSE)や畜産副産物に関する管理対策の確立-チェコ、エストニア、キプロス、リトアニア、ハンガリー、スロバキア
・ 食肉、牛乳などの加工工場の構造および衛生基準の整備-エストニア、キプロス、ラトビア、リトアニア、マルタ、スロベニア
・ 家畜伝染病管理対策の確立-ラトビア
・ 生体と畜産加工品の輸出入管理対策の確立-エストニア、ラトビア、ポーランド、スロベニア、スロバキア
・ 動物福祉規則の整備-ラトビア、リトアニア、ポーランド
・ 家畜の栄養管理対策の確立-チェコ、エストニア、キプロス、マルタ、ポーランド

○ 即座に準備に取り組む必要があるもの
・ 動物の移動管理制度の確立-ポーランド
・ TSEや畜産副産物に関する管理対策の確立-ポーランド、ラトビア、マルタ
・ 食肉、牛乳などの加工工場の構造および衛生基準の整備-チェコ、ハンガリー、スロバキア
・ 農村開発対策への資金確保-ハンガリー


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