豪州の飼料穀物需要は増加の見通し


ABAREが飼料穀物需給展望を報告

 豪州農業資源経済局(ABARE)は11月6日、豪州における今後の飼料穀物の需要と供給の見通しに関するレポートを発表した。これによると、飼料穀物の国内需要は今後5年にわたり大きく増加することを予想するとともに、その需要に見合った飼料穀物の供給の必要性を強調している。

 豪州の飼料穀物生産の約半分は輸出向けであり、その大部分は大規模な肉牛フィードロットや養豚産業の盛んな東部州から離れた西オーストラリア(WA)、南オーストラリア(SA)州で生産されたものである。一方、東部州のクインズランド(QLD)、ニューサウスウェールズ(NSW)、ビクトリア(VIC)州で生産される飼料穀物の大部分は、同地域内で消費されている状況にあり、ひとたび干ばつが発生すると飼料穀物不足は深刻な問題となる。このレポートは、豪州で地域的な飼料穀物不足の原因となった昨年から今年にかけての干ばつがほぼ終息したとみなして、飼料穀物需要の増加の可能性を産業別や地域別に見通している。

基本的な見通しは需要の大幅な増加

 ABAREは、主要な飼料穀物の生産は2003/04年度の2,150万トンから07/08年度の2,180万トンとわずかな伸びにとどまるのに対して、需要は家畜の飼養頭数の増加を背景に同期間において890万トンから1,050万トンと18%も増加するとみている。

 部門別には、肉牛フィードロット産業が強力な原動力となり、同期間において29%の需要増加を予想している。次いで養豚産業の24%増、ブロイラー産業の15%増、酪農の13%増と続く。

 地域別には、集約型の畜産部門が多く立地する東部州(QLD、NSW、VIC州)を中心に需要が増加する。

 なお、同期間において東部州内の生産に対する消費の割合は76%から85%に増加すると予想され、東部州の需要に見合う飼料を円滑に調達するためには、輸出割合が高いWA州とSA州からの供給、あるいは輸入に依存せざるを得ないことを示唆している。

国内需給を調整する3つの仮定条件

 ABAREでは、以上の基本見通しを示した上で、次の3つの仮定条件によりさらに需給動向を分析している。

(1) 東部州での飼料用大麦の生産増加(小麦からの転換による)
(2) 新品種(ワクシー・ソルガム(waxy sorghum):反すう動物の新陳代謝を高めるエネルギーを含有)の導入
(3) 穀物輸送コストの15%の削減

 これらの仮定条件に基づく分析結果と基本見通しを比較すると、2007/08年度において、品目や地域間で需給バランスに変化が生じ、それぞれの仮定条件の場合において、 (1)900万豪ドル(約7億円:1豪ドル=81円) (2)2,300万豪ドル(約19億円) (3)2,700万豪ドル(約22億円)−のコスト削減額が推計された。したがって、これらの仮定条件が実現すれば、家畜飼育コストが低減され、畜産業界の競争力の改善が図れるとしている。

 また、仮定条件のメリットを受益する部門として、 (1)は主に酪農や食鳥産業、 (2)はフィードロット産業、 (3)についてはWA州とSA州からの海上輸送コストの低減は東部州に、陸送コストの低減は酪農、養豚、フィードロット、ブロイラー各産業に幅広くそれぞれもたらされるとしている。

仮定条件の実現が円滑な供給の課題

 今回のレポートで示された仮定条件は、今後の需要増が見込まれる飼料穀物の供給に関して、国内完結型の改善策を例示したものである。つまり、仮定条件で用いられた要素は、むしろ今後の飼料穀物需給の処方箋とも言うべき性格を持つ。

 しかし、これらの仮定条件が実現できない場合には、今回の干ばつにおいても業界から要望されたように、東部州の生産者による穀物輸入への働きかけを強める可能性が高い。


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