2003年水産・畜産フェア開催
10月31日〜11月4日の5日間の日程で、首都ヤンゴンの貿易センターにおいて第2回ミャンマー水産・畜産フェアが開催された。これは同国商務省フェア開催委員会と畜水省との共催で今年2月に開催される予定であったが、同月に国内ノンバンク4行が倒産したことを受けて国内商業銀行で取り付け騒ぎが発生し、金融機関への信用不安により暴動の危険性が高まり、治安部隊の派遣による銀行の警備が行われた。その後、国家平和・開発協議会が銀行への資金援助を発表したことで騒ぎは収まったものの、イベント自体は無期限で延期されていた。
同フェアは開会式にキン・ニュン首相をはじめ国家平和・開発協議会第1、2両書記が出席する国を挙げた1大イベントとなっており、タイからはアジサイ商務相、中国からは国境を接する雲南省の要人などが出席した。
安全性確保のための取り組みが課題
当フェアの開催目的として前回掲げられていた4項目に下記の新たな1項目が加わった。
(1) 輸出を見据えた畜・水産業の振興
(2) 畜・水産物市場へのアクセスの増大
(3) 海外からの投資の誘致
(4) 畜・水産業に関わる生産技術の向上
(5) 食品安全性に留意した高品質付加価値商品生産の振興
とされ、世界的に輸出仕向け食品に求められる安全性は近年高まる一方であり、同国では水産物に比べ、輸出用畜産物に関しては、ニューカッスル病等の家畜疾病の撲滅等、食肉の安全性の確保の点で解決すべき課題が多く、輸出数量を伸ばせない状況がある。また、このように輸出産業としての規模も畜産業に比べ水産業が大きな現状を反映し、展示の優先度も水産業に力点が置かれる形となっていた。
今回のフェアで特徴的であったのは、入り口周辺に広大なブースを構えるタイ大手食品企業であるCPグループを初め、6カ国から38企業の出展があったことで、国別内訳としてはタイから20社、シンガポールから8社、中国から6社、韓国から2社、マレーシアおよび香港から各1社となっている。
そのほか、国内企業の参加数は95社、その中にはインドネシア飼料会社大手のジャプファ・コンフィード社との合弁のメイカ社や、現地日系周辺機器メーカーも含まれていた。
ブロイラーより在来鶏が好まれる
今回のフェアのように、畜産物の輸出を振興することにより外貨の獲得をしたい思惑がある一方で、例えば同国10月のヤンゴン市内食肉小売価格は鶏肉(在来種)はキログラム当たり1,562チャット(約131円:1,000チャット=84円)で取引されているのに対し、ブロイラー価格は1,125チャット(約95円)と低い。季節的変動はあるものの、この背景として同国での鶏肉需要はカレー料理に最適な在来種が好まれることがあり、国内鶏肉需要の大勢を占めるこれら在来種は大規模経営に適さないことが同国でブロイラー産業の振興が進まない理由の1つとなっている。このため同市北部のある中小農場では、採卵鶏用品種の雄を3カ月程度の長期間飼養することで在来鶏に近い肉質を作る取り組み例などがある。
また、同国では10月から始まる乾期に仏教に因む祭礼が集中しており、この時期に食肉需要は増大する傾向があるものの、祭礼のない雨期には需要が水産物に移行し、需要の弱いブロイラーの価格は大きく変動するため中小経営にとって不安定要素となっている。
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