ベタグロ社の対日輸出
タイの農業関連産業企業であるベタグロ社は、チャロンポカパン社に次ぐ規模の飼料生産部門を持ち、全国でブロイラーや豚の生産を行うとともに企業戦略として外資との合弁事業を推進している。
同社は11月6日、日本の大手食品企業の味の素株式会社と提携して豚肉調整品を日本に輸出する契約を12月に締結すると発表した。その内容は50:50の出資比率でオプブリ県に豚肉加工施設を作り、ベタグロ社が豚肉の原料を供給し、月産約200トンのとんかつ等の調製品を製造し、味の素社が来年から日本国内で販売するというものである。
日本の貿易統計上、タイからの豚肉調製品の輸入量は2001年および2002年とも1,300トン台で推移しており、これに月量200トンベースでの数量が加わることとなれば大幅な伸びとなる。
しかしながら、日本は2002年74万7,503トン、月平均(単純)では6万2千トンの冷蔵および冷凍豚肉を輸入しており、豚肉輸入量全体にタイ産豚肉輸入量の占める割合は2%とわずかである。
これは、タイが国際獣疫事務局(OIE)により口蹄疫(FMD)の非清浄国とされており、日本は加熱処理した豚肉しか輸入できないためである。
難しいFMD撲滅
同国は1970年代中ごろから日本の協力を得てワクチンセンターを建設するなど、FMD対策を行っているが、周囲のFMD汚染国からの密輸が後をたたず、撲滅までには至っていない。
そのため政府は、現実的な対応として、国境から離れた地域を清浄化する計画を立てている。 具体的には、チャチュンサオ県とチョンブリ県の地域で、清浄化対象とする動物(牛、豚、山羊、羊等FMDに感染する動物)全部にワクチンを投与後、発生した場合には殺処分等OIEで定めたルールに厳正に従って行うとしている。
このため、タイ農業協同組合省(農協省)畜産開発局は、計画実施に当たっての殺処分に係る補償等の費用を予算要求したとしているが、予定される地域は他の地域と地続きであり、清浄化予定地域に移入する車等へのチェックポイントの設置やそれを維持するための組織の確保など難しい問題の克服が必要である。
FMD撲滅のメリットと当面の対応
このように、タイの豚肉関係者にとって、自国がFMD清浄国となり、有望な市場とされる日本やシンガポールに対して豚肉を輸出することは、取り扱う数量および金額を大幅に増加させることが可能となることから長年の悲願ともなっている。
タイの豚肉輸出関係者によれば日本とシンガポールの輸入豚肉の市場規模を80万トンとみており、タイが計画しているFMD清浄地域からの輸出増加分だけでも金額ベースで20億バーツ(54億円:1バーツ=2.7円)となると推計している。
しかしながら、先に述べたようにFMD清浄国への輸出が可能となるまでには時間が必要であり、当面の間は豚肉を加熱処理した調製品の輸出をせざるを得ない。
この中で、8月の末にはシンガポールへの豚肉調製品の輸出について最終的な合意(「海外駐在員週報」通巻第593号)に至っており、タイの豚肉業界はますます調製品での輸出に特化していく状況にある。
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