USDA、カナダからの生体牛輸入再開の規則案を公表


規則案と60日間のパブリックコメント受付を公表

 米農務省(USDA)は10月31日、動植物検査局(APHIS)の牛海綿状脳症(BSE)に関する改正規則案を公表した。ベネマン農務長官は会見で「米国はこれまでBSEの侵入を防ぐための必要な措置を講じてきた。今回の規則案の公表は、公衆衛生上のリスクも極めて低いことが明らかであるとの科学的見地に基づいて再検討した結果を反映させたものである」と述べた。USDAでは、今回の改正規則案に対する来年1月5日(60日間)までのパブリックコメント期間を設けた上で改正規則案の再検討を行い、規則を制定するとしている。

カナダからの30カ月齢未満の生体牛などが対象

 規則案では、BSE発生地域のうち、1.厳格な輸入制限措置が講じられている 2.高度なサーベイランスが実施されている 3.反すう動物由来たんぱくの反すう動物への飼料給与の禁止が複数年行われている 4.BSEに対する追加的に適切なリスク軽減措置が講じられていること−などの条件を満たす地域を米国へのBSE侵入リスク最小限地域とし、この地域からの反すう動物およびこれらから生産される製品の輸入を条件付きで認めるとする内容となっている。USDAは、少なくともカナダはこのリスク最小限地域に該当するとしている。

 条件付きで輸入することができる反すう動物および製品は、

・直接と畜場に搬入される(と場直行牛)30カ月齢未満の生体牛
・フィードロットで肥育されることを目的として導入された生体牛であって30カ月齢未満でと畜されるもの
・30カ月齢未満の牛由来の生鮮肉(冷蔵、冷凍)
・30カ月齢未満の牛由来の枝肉(冷蔵、冷凍)
・牛由来の生鮮なレバー(冷蔵、冷凍)
・牛由来の生鮮なタン(冷蔵、冷凍)

などとなっており、この他にも鹿、羊、ヤギなどが輸入再開の対象となっている。また、米国からカナダのと畜場などへ搬入し処理加工した製品の場合、 1.その製品原料(肥育牛、食肉など)が米国産であると証明できること 2.米国産原料のみを取り扱うまたはカナダ産のものと完全に分離したラインを有すると畜場などで処理加工されたものである−という条件に合致すれば、再び米国へ輸入を認めるとしている。なお、9月以降USDAが条件付きで輸入を認めている30カ月齢未満の牛由来の骨なし部分肉などについては、今回の規則改正作業が続けられる間においてもこれまでどおりの申請が認められるとしている。



規則案公表に対する関係者の反応

 規則案の公表を受けカナダのバンクリフ農業・食糧大臣は、「喜ばしいニュースである。今後につながる大きな一歩であるが、われわれを取り巻く困難な状況を脱したわけではない。米国は、9月には科学的見地に基づき速やかに骨なし部分肉の輸入禁止を解除してくれた。今回もパブリックコメント期間の終了後、速やかに輸入禁止措置が解除されることを願っている」と述べた。

 一方、北部草原地域(ノーザンプレーン)を支持基盤に持つ複数の議員や中小規模の会員を有するファーマーズユニオンは、今回の輸入再開は性急であるとコメントしており、カナダとの国境にあるノースダコタ州選出のポメロイ下院議員(民主党)は「もし、米国内にBSEが入って来たらわが国の農業と地域経済は壊滅的な打撃を受ける。カナダでのBSE発生からまだ6カ月しか経過していない。カナダ産の牛・牛肉が安全かどうか正確に見極める時間がもっと必要だと確信している」と述べた。また、米国牧場主-肉用牛生産者財団(R-CALF USA)のマコーネル理事長は、「今回のUSDAがとった生体牛輸入再開の動きは、国際的な流れに逆行しているのではないか。また、カナダをBSE侵入リスク最小限地域と分類することは、OIEの基準に抵触するのではないか」と述べている。


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