2003年の牛肉域外貿易−輸入が輸出を上回る−


◇絵でみる需給動向◇


●●●輸出は前年比23.3%減●●●

 イギリス食肉家畜委員会(MLC)によれば、2003年のEUから域外への牛肉輸出量(冷蔵・冷凍、製品重量ベース、子牛肉を除く)は、前年に比べて23.3%減の26万5千トンと2002年に引き続き大幅に減少した。これはEUからの最大の牛肉輸出先であるロシアが昨年4月から国内の畜産業保護のため、畜産物(牛肉・豚肉など)への関税割当制度を導入した影響などによるものである。

表1 EU15の牛肉域外輸出量
(単位:千トン、%)
資料:MLC
 注:製品重量ベース(冷蔵・冷凍、子牛肉を除く)

●●●ロシア向け輸出量、大幅減●●●

 ロシア向け輸出量を国別にみると、ドイツが前年に比べて49.3%減の5万5千トン、アイルランドが同5.8%減の5万8千トンと減少し、EU全体では、27.2%減の20万トンとなった。一方、ブラジルやアルゼンチンなど南米諸国からのロシア向け輸出量は急増し、ブラジルでは同233.9%増の9万1千トンとなった。ロシア側のクオータによりEUの枠は確保されているものの、ブラジルやウクライナとの競合が見込まれ、EUからのロシア向け牛肉輸出は今後も厳しい状況になることが予想される。

表2 ロシアの牛肉輸入量
(単位:千トン、%)
資料:MLC
 注:製品重量ベース(冷蔵・冷凍、子牛肉を除く)

●●●輸入は引き続き増加傾向●●●

 一方、2003年におけるEU域外からの輸入量をみると、過去最高となった前年と比べてさらに6.4%増の27万2千トンとなった。国別にみるとブラジルが最大で同23.7%増の14万3千トンとなり、EU域外からの輸入量の約50%を占めている。これに対して同じ南米のアルゼンチンからの輸入は、同国において2001年に発生した口蹄疫や干ばつの影響はなくなったと考えられるものの、同15.4%減の5万1千トン、ウルグアイもまたカナダ、アメリカ向けの輸出量が増加したことなどから同46.2%減の1万7千トンとなった。

 また、新規加盟国(AC10)からの輸入量は同63.9%増の3万2千トンと大幅に増加した。国別では最も輸入量が多いのはポーランドで2万トン、次いでハンガリーの8千トン、スロバキアの2千トンとなった。

 MLCによると、さらにそれらに加えてEU域外から前年と比べて6%増となる10万4千トン以上のコンビーフなどの牛肉加工品が輸入された。牛肉加工品についてもブラジルが主要輸入先であるが、2003年にはアルゼンチンやウルグアイからの輸入もわずかではあるが増加した。

 このように、2003年における牛肉の域外貿易については輸入量が輸出量を上回る結果となった。今後においても・ロシアでの関税割当制度の実施・ブラジルやアルゼンチンなど南米諸国の輸出競争力がある牛肉との競合・域内における牛肉消費の増加見込みおよび飼養頭数の減少などによる生産量の減少−などから今まで牛肉の自給率が100%を超えていたEUも引き続き純輸入市場となることが見込まれる。

表3 EU15の牛肉域外輸入量
(単位:千トン、%)
資料:MLC
 注:製品重量ベース(冷蔵・冷凍、子牛肉を除く)

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