特別レポート

EUにおける畜産副産物をめぐる状況
〜レンダリング産業を中心として〜

畜産振興部 井田 俊二、佐々木 奈穂美

はじめに

 EUでは、牛海綿状脳症(BSE)をはじめ、食品や家畜飼料の安全性に係る問題に対してさまざまな対策が講じられている。畜産副産物については、2002年に新たな規則が制定され、包括的かつ効果的な対策が講じられることとなった。一方、こうした対策に伴う規制の強化により、近年、畜産副産物を取りまく状況は大きく変化した。

 このレポートでは、EUのレンダリング産業、特にイギリス、イタリアおよびオランダにおける畜産副産物の状況について報告する。



I EUの畜産副産物を取りまく状況

1 背景

 EUでは牛、豚、鶏など由来の畜産副産物が年間1,600万トン生産され、これらを原料として製造された油脂、肉骨粉をはじめとする動物性タンパク質などは、食品、飼料、肥料、ペットフード、工業製品などの原料として幅広くリサイクルされてきた。

 しかしながら、特に90年代後半からBSE問題をはじめとする食品や家畜飼料の安全性に係る問題が連続して表面化した。96年3月、イギリス政府がBSEと新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の関連について公表したことをはじめ、オランダにおける豚コレラの大量発生・殺処分、ベルギーにおける鶏肉のダイオキシン汚染やイギリスにおける口蹄疫などの問題は、その多くが家畜飼料に起因したものとみられており、これまで以上に消費者の食品や家畜飼料の安全性に対する関心が一層高まり、畜産副産物に関する規制強化が課題となった。

 こうした状況に対応するため、欧州委員会では食品の安全性の確保を政策の最優先課題の一つとして位置づけ、2000年1月、食品の安全性に関する白書を公表し、食品の安全性を確保するための包括的な指針を示した。その一つとして、それまで制定されていたさまざまな規則を見直し、食品の生産から消費に至るまで一貫性があり、かつ透明性の高い規則の制定に向けた80以上に及ぶ施策方針がまとめられた。

2 規則の整備

 この方針に基づき、2001年5月、それまで10年間以上にわたるBSE対策などの決定事項が一つに統合される形で「伝達性海綿状脳症の防疫、管理、撲滅に関する規則(EC/999/2001)」(以下「TSE規則」という。)が定められた。

 この規則は、伝達性海綿状脳症対策全般について規定しており、家畜衛生や公衆衛生に影響を及ぼすおそれのある家畜について、その生産、家畜および畜産物の流通に至るまでカバーしている。具体的には、牛、羊、ヤギにおけるTSEのモニタリング、特定危険部位の除去、飼料の禁止措置に関する事項のほか、新たにEUレベルでのTSE撲滅対策、国内、EU域内やEU域外との取引ルール、さらにはBSEステータスに基づく国の分類基準が規定されている。実施は2001年7月となっているが、分類判定作業の観点から移行措置の再延長が決定され、正式な適用は2005年7月1日まで延長されている(1128/2003)。

 TSE規則に続いて2002年10月、2年間にわたる議論を経て「畜産副産物に関する規則(EC/1774/2002)」(以下「畜産副産物規則」という。詳細については本誌2003年9月号参照。)が制定された。

 この規則では、畜産副産物について、集荷、輸送、保管、取扱、加工、処分に至る広範囲に及ぶ家畜および公衆衛生の厳格なルールを定め、死亡獣畜や使用禁止物質など危険性の高い物質を飼料の原料ルートから排除することとしている。食品として適切であると証明された家畜由来の副産物のみを飼料原料とするため、すべての流通段階における畜産副産物の特定やトレーサビリティシステムを確立し、危険度に応じて分類した原料の交差汚染や不適正な利用を防止するための対策が規定されている。

 実施は2003年5月からとなっているが、各国での家畜疾病の発生状況、施設などの対応状況などを踏まえた移行措置の規定が定められている。

 畜産副産物に関連した対策は、主にこの二つの規則で規定されているといえる。

EUにおける畜産副産物に関連した規則の推移

3 畜産副産物に関連する規則のポイント

(1)畜産副産物の分類〔畜産副産物規則〕

 家畜・公衆衛生または環境への潜在的危険性の観点から畜産副産物を次のとおり3区分に分類し、その処理方法が明確化されている。

 畜産副産物については、この分類に基づき、交差汚染や不正使用を防止するため、集荷、輸送、保管の各段階において、原料を特定できる表示やトレーサビリティの整備が必要とされている。

(注)C1とC2またはC3の混合物はC1に、C2とC3の混合物はC2に分類される。

(2)レンダリング工場の分離〔畜産副産物規則〕

 危険度に応じて分類した畜産副産物の交差汚染を排除するため、と畜施設とレンダリング施設の分離を規定している。

 この規則では、細かな施設の設置要件までは規定していないが、施設を稼働する場合、あらかじめ政府の承認を受けるため、施設の分離状況などの確認が行われることとなっている。たとえば、C3の畜産副産物を処理する場合には、集荷、輸送、保管、取扱、処理加工、処分に至るまで完全な専用化が必要となり、同じ建物を分割して危険度の異なる物質を利用することは制限される。

(3)飼料利用の禁止措置〔TSE規則〕

 EU各国でBSEの発生件数が増加する中、2000年12月、欧州理事会でEU全域でのBSE対策の必要性が検討され、2001年1月より食用に供されるすべての家畜に肉骨粉などの加工タンパク質を飼料として給与することを暫定的に禁止する措置が講じられた(2000/766)。

 この禁止措置は、2003年9月、TSE規則本体に盛り込まれ、恒久的な措置として規定されている(1234/2003)。

飼料利用が禁止されている加工タンパク質

(4)特定危険部位(SRM)〔TSE規則〕

 2000年6月にEU全域におけるSRMの利用に関する欧州委員会決定がなされ、2000年10月から適用された(2000/418/EC)。牛、羊およびヤギについてSRMが規定されており、該当部位については除去後、着色、廃棄されなければならない。その後、EU常設科学委員会の評価結果を受けて、部位が追加されている。また、BSEの発生頻度の高いイギリスやポルトガルでは、SRMの範囲が他国よりやや広くなっている。現在はTSE規則でSRMが規定されており、この規則では、すべての加盟国に対して牛、羊、ヤギのSRMを除去するよう規定されている。なお、SRMについては、科学的な知見に基づき、随時部位の追加などの見直しが行われている。

特定危険部位(2003年10月現在)

(5)レンダリング方法〔畜産副産物規則〕

 EUでは、90年の理事会指令(90/667)で初めて、レンダリング方法の基準を規定した。その後、BSEやスクレイピーを不活化するためのレンダリング処理方法の研究を行い、最終的に、97年4月から、133℃、3気圧、20分という条件が欧州委員会での決定で開始した(96/449/EC)。現在、レンダリング工場における処理条件は畜産副産物規則で規定されている。



II 畜産副産物をめぐる各国の状況

1 イギリス

(1)BSEの発生状況

 イギリスでは86年に初めてBSEが確認された。発生頭数は、92年の3万7千頭をピークとして減少しており、2003年には612頭となっているが、他の加盟国と比べて非常に多い。

(2)イギリスにおけるレンダリング産業の概況

 UKレンダリング協会の資料によると、イギリス全体のレンダリング会社は17社で、26工場(イングランド17、スコットランド4、ウェールズ1、北アイルランド4)となっている。年間の畜産副産物の処理量は175万トンで、25万トンの油脂と40万トンの肉骨粉などのタンパク質を生産している。

(3)調査先の状況(Aレンダリング工場)

 このレンダリング会社は、年間100万トン以上の畜産副産物を取り扱うイギリス最大のレンダリング会社で、中南部を中心に5つのレンダリング工場を所有している。調査をしたA工場は、イギリス中南部にあり、82年からレンダリング事業に着手し、2000年からは、併設の発電施設(別の会社が経営)で製品を燃料として利用している。

Aレンダリング工場全景
Aレンダリング工場、OTMS専用の原料搬入口

〔製造について〕

・イギリスでは、30カ月齢以上の牛をと畜後すべて廃棄処分(OTMS計画)としており、これに基づくと畜牛、死亡獣畜、SRMなどのレンダリング処理を行っている。したがってこの工場は、C1原料を処理する工場に分類される。

・原料の処理量は、政府が実施する入札により決定する。この入札では、今後18カ月分の処理量が決められ、1トン当たり30〜60ポンド(6〜1万2千円、1英ポンド=203円)の価格で政府と契約する。

・工場は24時間稼働しており、2カ月に1度クリーニングのため工場を休止する。1時間当たりの処理量は6トンである。なお従業員は90名(うち燃焼部門は3名)である。

〔販売について〕

・製造された肉骨粉は、併設している火力発電施設で燃料として利用され、高圧水蒸気と電力を工場に供給している。また、この施設で発電した電力の余剰分は、1メガワット当たり60ポンド(1万2千円)で電力会社に販売されている。

・燃焼灰は現在埋め立てているが、将来は、肥料やプラスチック原料として利用したい意向である。また、油脂については、燃料用または工業用として利用されている。

・焼却施設についての環境に関連する基準値を、イギリスやEUのものよりも厳しく設定しており、環境面での対策に配慮している。

Aレンダリング工場、焼却施設

(4)その他イギリスにおける状況

ア レンダリング工場の認定

 イギリス政府の公表資料によると、イングランドにおける全般的なレンダリング認定工場は24工場(2004年4月1日から適用)となっている。

 このうち魚類(C3)を専門とする4工場を除く20工場の原料分類別内訳をみると、延べ件数で、C1:5件(ほ乳類家畜5件)、C2:9件(ほ乳類家畜6件、家きん3件)、C3:16件(ほ乳類家畜4件、家きん6件、豚血液など6件)となっている。

イ これまで講じられたBSE対策とレンダリング産業への影響について

 イギリスでは、86年に初めてBSEが確認されてからさまざまな対策が講じられているが、これまでのBSE対策とレンダリング産業へ及ぼした影響について、UKレンダリング協会がまとめている。

 BSE対策の実施により、肉骨粉や油脂の流通ルートが制限されたことに加え、レンダリング工場においては、新たな基準に対応するための施設整備や原料、製品のトレーサビリティの確立のための記帳義務などの対応が図られたことが分かる。

BSE対策とイギリスレンダリング産業に及ぼす影響
資料:UKレンダリング協会



2 イタリア

(1)BSEの発生状況

 イタリアでは、2001年に初めて国産牛でBSEが確認された。2003年までの発生状況は年間30〜50頭程度で推移している。

(2)イタリアにおけるレンダリング産業の概要

 イタリアには、50〜55のレンダリング工場があり、90年のEU規則に基づきイタリア全体のレンダリング工場が処理する原料の区分ごとに分類された。

(3)調査先の状況

ア Bレンダリング工場

 この会社は、66年に家きん副産物レンダリング会社として設立された。現在5つのレンダリング工場(いずれも北イタリアに所在)を所有しており、このうちB工場(88年操業開始)は、家きん由来の副産物を原料とするペットフード専用工場である。家きん副産物専門のレンダリング工場は、この地方では唯一である。

 この会社が所有する5つの工場は、原料分類別にみるとC3が4工場、C1が1工場となっている。

Bレンダリング工場、C3原料(家きん副産物)
Bレンダリング工場、クッカー/ドライヤー

〔製造について〕

・原料はすべて家きん由来の副産物で、1時間当たりの処理量は、18〜20トンである。工場の稼働は、月曜日の午後から土曜日の夕方(または日曜日の朝)で、この間24時間稼働している。この工場はC3に分類され、1日当たりの原料集荷量は450トンである。

・この工場の従業員数は25名で、別の町にある1工場を含めると75名(運転手、守衛を含む)おり、2交代で工場を稼働している。なお、この別の町にある工場では1時間当たり18〜20トンの羽毛を処理している。

・レンダリング方式*は、湿式法(80〜90℃で処理)と乾式法(140℃で処理。伝統的な方式)を併用しており、3基のクッカー(ドライヤー)で肉骨粉などを製造している。湿式で処理した方が製品の需要が強く、取引価格が高い。



・原料集荷はすべて自社トラックで行っており、集荷用に200個のコンテナを所有している。現在その3割が冷凍コンテナであるが、今後冷凍コンテナへの転換を図っていくこととしている。

・生産された肉骨粉はすべてペットフード用であり、主な販売先は米国、ドイツの大手ペットフードメーカーである。

〔処理料について〕

・家きん副産物原料は、レンダリング会社が1キログラム当たり20セント(27円、1ユーロ=135円)で供給業者から購入している。一方、羽毛を扱っている工場では、レンダリング会社が処理料として1キログラム当たり50セント(68円)を排出者から受け取っている。

イ Cレンダリング工場

 C工場は、B工場と同じ会社が経営しており、自動車で30分ほど離れたところに位置する。B工場と比較すると施設が古い。数年前までは魚粉を製造していたが、その後、家きん内臓の処理を行い、現在は、あらゆる種類の原料を処理している。したがって、この工場の原料はC1に分類される。

Cレンダリング工場全景

〔製造について〕

・畜産副産物原料は、死亡獣畜のほか牛の頭部、腸の一部などのSRMが主体である。1日当たりの原料処理量は240トンで、肉骨粉の歩留まりは20%程度である。

・この工場では2基のクッカー(ドライヤー)を設置しているが、いずれの機械も古い。

製造された肉骨粉などは、専用トラックでセメント工場に輸送され処分されている。

〔処理料について〕

・原料は、レンダリング会社が処理料(肉骨粉焼却費込み)として1キログラム当たり12〜30セント(16〜41円)を排出者から受け取っている

・肉骨粉の処理は、セメント会社に対して1キログラム当たり2.5セント(3円)を焼却料として支払う。油脂については、自社ボイラーで燃料として利用し、余剰分は1キログラム当たり2.5セント(3円)で外部に販売している。

・2年半前から約1年間、政府からC1の原料を処理する工場に対して1キログラム当たり21セント(28円)の補助金が交付されていたが、それ以降補助金は打ち切られた。

Cレンダリング工場、肉骨粉置場
Cレンダリング工場、肉骨粉専用輸送車
(赤色のシールに、C1物質ですべて廃棄しなければならないとの表示がある)

ウ D食肉処理工場

 この工場は、イタリア北部にあり、牛のと畜、解体および食肉の加工処理などを行っている。

〔製造について〕

・牛はトレーラーで搬入されており、牛100頭当たりの輸送経費は900ユ−ロ(12万2千円)である。シャロレー種やリムジン種が中心で、成牛は18カ月齢で生体重600〜800キログラム程度である。

・搬入された牛は、と畜前に12カ月齢以下、12〜24カ月齢、24カ月齢以上の3区分に分類される。12〜24カ月齢のグループはSRMの除去、24カ月齢以上のグループはSRMの除去とBSE検査が実施される。

・牛は、と畜前とと畜後に健康検査を受け、その結果により分類される。

・この工場では、1日当たり牛1,200頭(140〜150頭/時)をと畜しており、と畜は朝6時から始まり8〜9時間で終了する。

・各種部分肉などのほか、1日当たり150万個のハンバーガーパティを製造している。また、この工場では食用油脂も製造している。

D食肉処理工場、青く着色された牛の頭部などのSRM(C1物質)
D食肉処理工場、畜産副産物置場
(赤はC1用、緑はC3用で置場が指定されている)
D食肉処理工場、C1専用畜産副産物コンテナ

〔衛生管理について〕

・この工場には、BSE検査官が12名配属されており、8名が常駐している。

・工場内のと畜解体施設では、床にラインが引かれており、色別のコンテナ(緑色:SRM以外の骨および12カ月齢以下の残さ(C3)、青色:頭がい、せき柱などのSRM(C1)、赤色:腸などのSRM(C1))が配置され仕分け・回収されており、危険度に応じた畜産副産物の分類が行われている。

〔せき柱などの処理について〕

・せき柱の9割はこの食肉工場で分離されており、残り1割は枝肉のまま食肉小売業者などに搬出されているが、枝肉での搬出は減少傾向で推移している。これは、食肉小売業者などからレンダリング会社へせき柱などを渡す場合、少量なので処理料が高くつき食肉小売店にとって採算がとれないためである。そのコストは、食肉小売業者などの販売価格に転嫁されている状況にある。

・せき柱、頭部などのSRMについては、別の町にあるレンダリング工場(C1に分類)に、1キログラム当たり13セント(18円)の処理料を払って引き取ってもらっている。

・C3に分類された畜産副産物は、別のレンダリング工場に運ばれている。

・なお、レンダリング原料のコンテナはレンダリング会社が用意しており、輸送費は食肉処理会社が支払っている。

〔血液の処理について〕

・処理場から回収された血液は、牛の月齢で3区分に分類され、業者が回収している。個体検査で問題がない牛の血液(健康牛由来の血液)は、ヘモグロビン(肥料原料)とタンパク質(ソーセージ原料)に分離(血液の飼料原料利用は禁止)され利用されている。

・健康牛由来の血液はC3に分類されており、最も危険度の低い血液のみ利用されている。

〔汚泥について〕

・工場排水は、地下に設置しているフィルター(6ミリより細かい目)でろ過しており、メッシュに残った固形残さはC1に分類される。

・洗浄水や汚水には腸管内容物が含まれており、浄化槽で処理されたのち汚泥などの固形物は、たい肥センターへ搬送される(C1扱いではない)。たい肥センターでは、4〜6カ月かけて肥料を製造している。

〔廃棄物処理について〕

・C1に分類されたせき柱などの混合物の50%は、工場敷地内にある焼却炉で焼却(900〜1,000℃)しており、排出される焼却灰はセメント工場に1キログラム当たり1.7セント(2円)で販売している。また残りの50%は、レンダリング工場に処理料を支払って処理してもらっている。

・自社焼却炉は、万一レンダリング会社が閉鎖し、C1の処理ができなくなってしまった場合に備えて整備したものである。

3 オランダ

(1)BSEの発生状況および対策

 オランダでは、97年に初めてBSEが確認され、2000年まで年2頭発生している。2001年〜03年は、年20頭前後の発生となっている。主なBSE対策は次の通りである。

・89年:反すう家畜由来の残さを反すう家畜の飼料としての給与を禁止
・94年:ほ乳類の家畜由来の肉骨粉などを反すう家畜の飼料としての給与を禁止
・97年:脳、せき随などの危険部位をと畜場で除去し、最終的に焼却を義務化
・99年:反すう家畜由来の肉骨粉とそれ以外の肉骨粉の製造を完全に分離
・2001年:ほ乳類家畜由来の肉骨粉などの国内の家畜への給与を禁止
・2001年:30カ月齢以上のと畜場向けのすべての牛について、BSE検査を実施

(2)オランダにおけるレンダリング産業の概要

 オランダのレンダリング会社は1社に集約されており、国内では2工場(その他ベルギーに1工場ある)が稼働している。北部にある工場がC3、南部にある工場がC1の畜産副産物の処理工場に分類されている。

 オランダでは、2001年当初、BSE問題の影響で大量の肉骨粉などの在庫が発生したが、2002年には、焼却施設などの整備が進み過剰在庫問題の解消が図られた。

(3)調査先の状況(Eレンダリング会社)

・集荷する畜産副産物原料は、危険性の高い特定危険部位および死亡獣畜で、年間60万トンを集荷している。したがってC1の処理工場に分類される。原料は自社トラックで食肉処理場などから集荷している。
・工場は、月曜日〜金曜日の間24時間稼働しており、従業員は約200名(うち運転手が70名)いる。
・工場で製造された肉骨粉は、火力発電所に運ばれ、燃料として利用されている
・現在は、原料排出者から処理料を受け取り、火力発電所に燃料として販売している。
・現在、C1の処理工場に対して国から補助金が交付されているが、補助金は2004年で打ち切られることとなっている。
・生産者によると、死亡牛を排出する際には1頭当たり20ユーロ(2,700円)を支払っているとのことであった。



おわりに

 今回、EUのレンダリング工場や食肉処理工場での畜産副産物の取り扱いについて調査したが、これらの工場では、食品や家畜飼料の安全性を確保するために講じられた対策を確実に履行するため、多くの労力や施設整備を伴う対応(危険度に応じた畜産副産物の的確な分類やトレーサビリティの確保など)がとられていた。

 今回の調査を通じて、食品や家畜飼料の安全性を確保するためには、これらの産業における的確な対応の重要性を改めて認識すると同時に、畜産副産物リサイクルの環に係わる幅広い消費者層においても、畜産副産物由来の製品を適正に利用するための認識が重要であると感じた。

 レンダリング産業については、国によって、その対応の差はあるものの、これまで講じられてきた対策に応じて、ハード、ソフト両面からそれぞれの企業の実状に即した対応が図られており、その結果、施設の専用化や大規模化などが進んでいるものとみられる。加盟国が25カ国に拡大し、物資の流通が一層拡大する中で、今後EUのレンダリング産業がどのような方向に進展していくか注目したい。

(参考資料)

 ・Code of Practice on the Production, Handling and Processing of Animal By-Products(UK)
 ・EU Commission ホームページ
 ・Department for Environment , Food and Rural Affairs ホームページ
 ・UK Food Standards Agency ホームページ
 ・UK Renderer's Association ホームページ



元のページに戻る