欧州委、WTO交渉に向けWTO加盟国へ書簡を送付


フィシュラー委員ら各国に書簡を送付

 欧州委員会のラミー委員(通商政策担当)とフィシュラー委員(農業および農村開発・漁業担当)は5月9日、現在行われている世界貿易機関(WTO)交渉にはずみをつけるため、全WTO加盟国に、EUはすべての輸出補助金を撤廃する用意があることなどを内容とする書簡を送付した。

輸出補助金の撤廃は各国との協調が条件の一つ

 書簡の主な内容は以下の通り。

市場アクセス:加盟国間の差は大きいが、関税削減についてはブレンド方式に所要の修正を施すことにより、すべての加盟国の関心やセンシティビティに対応することが可能である。

国内支持:EUは、すべての貿易歪曲的な補助金の大幅な削減を引き続き目指す。EUは、貿易歪曲的な支持(黄色の政策)の大幅な削減や青の政策の削減および上限設定の用意がある。さらに、先進国におけるデミニミス(最小限の政策)は廃止されるべき。

輸出補助金:市場アクセスおよび国内支持について、受け入れ可能な結果が得られるなら、EUは輸出補助金について動く(撤廃する)用意がある。同時に、輸出信用、食糧援助および国家貿易を含むすべての形態の輸出競争措置について、各国が同様の措置を採ること(full parallelism)が必要である。

 輸出補助の撤廃については、メキシコ・カンクンでの会合前に、EUは既に、途上国が関心を持つ品目について輸出補助金の撤廃を提案していた。あらかじめ特定品目を輸出補助金が撤廃される品目リストから除外していなかったことから、EUはすべての輸出補助金が議論の対象となるとしていた。しかしながら、この輸出補助金を撤廃する途上国の関心品目を「リスト」にするという方式は機能しなかった。今回の提案は以上のことを考慮した結果である。

他の加盟国の努力を期待

 フィシュラー委員は5月10日、書簡の送付に関連し、「農業はWTO交渉を成功させるための鍵である。このため、われわれは柔軟性を示す用意がある。米国、豪州、カナダは、彼らが実施している輸出信用、食糧援助および国家貿易などすべての輸出支援措置をEUと完全に一致させる意思があることを明確にしなければならない。」とのコメントを公表している。

生産者団体は懸念を表明

 欧州農業者のロビー団体である欧州農業組織委員会/欧州農業協同組合委員会(COPA/COGECA)は5月11日、欧州委員会のラミー委員とフィシュラー委員が全WTO加盟国に送付した、すべての輸出補助金を撤廃することを提案する書簡について非常に懸念していること、輸出補助金、国内支持、市場アクセスすべてにおいて公正かつバランスの取れた合意を欧州委員会が目指すのであれば、欧州委員会の手段は間違っている旨の書簡を送付したことを公表した。


元のページに戻る