EFSAがイギリスのBSEに関する2つの見解を発表
欧州食品安全機関(EFSA)は5月12日、イギリスの牛海綿状脳症(BSE)リスク評価に関する2つの見解(opinion)を発表した。
EFSAは、欧州委員会やその他のEUの機関からは法的に独立した機関として設置され、食品安全、動植物衛生、動物福祉、栄養、遺伝子組み換え作物(GMO)など広範な事項について総合的、科学的助言を政策決定者に対して提供することなどが任務となっている。今回の見解は、EFSA内にある、科学専門家によって構成される「生物学的な危険(TSE/BSEを含む)科学パネル」により検討され、発表されたものである。
DBESおよびOTM
イギリスは、BSEの発生国であり、国際獣疫事務局(OIE)の基準では、「BSE高リスク国」に分類されている。これについてイギリス環境・食料・農村地域省(DEFRA)は、現在までのイギリスでのBSE発生状況から判断すると、他のEU加盟国と同様に「BSE中リスク国」となり、他のEU加盟国と同様に牛肉・牛肉製品の輸出が行われるべきであると欧州委員会に提案していた。
欧州委員会は、イギリス産の牛肉・牛肉製品の加盟国および第3国への輸出を、一定の要件を満たすものに限定している(委員会決定98/256/EC)。この措置は、生年月日に基づく輸出措置(DBES)と呼ばれ、その条件は(1)牛肉を生産するための牛は1996年8月1日(肉骨粉の給与禁止)以降に生まれたもの、(2)牛群および母牛の履歴が追跡可能であること、(3)牛肉・牛肉製品はと畜月齢が6カ月齢から30ヵ月齢であり骨が除去されていること、(4)母牛は当該牛が6カ月齢になるまで生存し、BSEを発症しなかったこと−となっている。
また、イギリスでは現在、30カ月齢以上(OTM)の牛の処分対策に基づき、30カ月齢以上の牛はと畜後焼却処分されており、食肉として市場に流出することはない。
欧州委員会からEFSAへの評価依頼
これに関し、欧州委員会は、(1)DEFRAが実施した「BSE中リスク国」という評価方法の統計学的見地からの正当性(2)DBESで定める牛のと畜時の月齢条件(30カ月齢以上および6カ月齢未満の牛も対象とすること)および母牛の生存条件を廃止の妥当性(3)2003年7月イギリス食品安全庁(FSA)が行った、OTM処分対策を廃止しBSE検査に切り替えるという勧告(駐在員情報第587号(平成15年7月22日)参照)の正当性−についてEFSAに見解を求めていた。
イギリスは他の加盟国と同様の「BSE中リスク国」に
これについて、EFSAは、DEFRAが実施した評価の方法は統計学的に正しく、イギリスで1996年8月1日以降に生まれた牛については、今年後半にはイギリスはOIEが定める「BSE中リスク国」となるというイギリス政府の主張は、信頼レベル(confidence
level)95%の水準に達すると結論付けた。
この結果、1996年8月1日以降に生まれた牛についての、OTM処分対策の廃止、DBESで輸出用として生産される牛のと畜時の月齢条件および母牛は当該牛が6カ月齢になるまで生存していなければならないという条件の廃止を認める見解を発表した。しかし、1996年7月31日以前に生まれた牛については、まだリスクがあると考えられるため、引き続き食用・飼料用として流通させないための対策を講じる必要があるとしている。
欧州委員会は、EFSAの見解を受け、現在実施されている規則を改正する提案を発表することとなる。現在実施されているDBES導入後も、フランス、ドイツがイギリス産牛肉の輸入禁止措置を継続した経緯がある。今後、提案されることになる規則などについても他のEU加盟国の賛同がスムーズに得られるか注目したい。
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