欧州委、GM作物の販売を約6年ぶりに認可


約6年ぶりに新規認可

 欧州委員会は5月19日、遺伝子組み換え(GM)スイートコーンBt11の域内での販売を認可した。今回の決定によりEUでは1998年10月以来、約6年ぶりにGM作物が認可された。今回の決定の有効期間は10年間である。

 今回認可されたBt11は、スイスの種子メーカーであるシンジェンタ(Syngenta)が申請していたものであり、欧州委員会は同日同社に対して認可を通知した。

 Bt11については、1998年にEU域内への輸入と域内での飼料、コーン油、スナック菓子など加工食品の原料としての利用が認められており、今回の認可は、缶詰に加工されたGMスイートコーンや生ものの輸入と販売を認可するものである。

 一方、Bt11の域内での栽培については議論中であり、いまだ認可されていない。

欧州委員会が最終判断

 EUでは1998年10月以降GM作物について安全性に疑問があるとして、新規認可を凍結していた。その後、EUは認可再開に向け、GM作物に関する2つの規則(GM作物のトレーサビリティおよびその表示、GM作物由来の食品と飼料の市場での表示)を制定した。その後、新規認可に向け欧州委員会での審査や、EUのフードチェーン・家畜衛生常設委員会での審査、農相理事会での議論を行ってきたが、欧州委員会の提案について加盟国によって意見が分かれていたことなどから本年4月の農相理事会でも結論が出ず、欧州委員会に最終判断が委ねられていた。

消費者の選択の幅を拡大

 今回の決定に当たり、欧州委員会のバーン委員(保健・消費者保護担当)は、「GMスイートコーンは、世界で最も厳しい販売前の安全性評価を受け、通常(conventional)のトウモロコシと同等に安全であると科学的に評価された。このため、今回の認可は「食品の安全性の問題」ではなく、「消費者の選択の問題」である。GMに関するEUのルールは、明確な表示と、トレーサビリティを求めており、表示は消費者が判断するために必要な情報を提供することとなる。何を購入するかは、消費者の自由である。」とのコメントを公表している。

 なお、今回の欧州委員会によるGM作物の販売認可については、GM作物の生産国に好意的な反応がある半面、EU規則によって、販売業者などに課しているトレーサビリティ確保のための5年間の記録保管義務が過重であるとの批判や、GM作物由来の食品であることを明確に表示することにより欧州の消費者に選択されないのではないかと危惧する意見があると報道されている。

◎生産者団体、貿易交渉に懸念を表明

 欧州農業者のロビー団体である欧州農業組織委員会/欧州農業協同組合委員会(COPA/COGECA)は5月25日、前日に行われたEUの農相理事会において、WTO交渉や本年10月の合意を目指して現在行っているメルコスル(MERCOSUR、南米南部共同市場)とのFTA渉において、貿易相手国にEU市場を開放することによって、欧州の家族経営による農業が危機にひんする恐れがあると懸念していること、WTO交渉においてEUが輸出補助金を廃止するのであれば、米国、豪州などにもすべての形態の輸出競争措置を廃止することを求めることを主張したと発表した。


元のページに戻る