栽培禁止期間の延長や試験栽培の大幅縮小へ
昨年、連邦政府は、食用としては豪州で初めて遺伝子組み換え(GM)カノーラの商用栽培を許可したが、実際の栽培に当たって、許可権限を持つ各州政府がそろって栽培禁止期間を設け、栽培解禁に慎重な対応を採ってきた。今年、栽培禁止の期限が到来する州もあることから今後の対応が注目されていたが、各州ともおおむね栽培禁止期間の延長や試験栽培の縮小を取り決め、解禁には依然慎重な姿勢を示した。これを受けて、連邦政府から商用栽培の許可を受けていたバイエルとモンサント両社は、豪州でのカノーラの商用栽培から撤退すると発表した。なお試験栽培は実施の予定。各州の対応は次の通り。
・ ビクトリア(VIC)州、今年5月までの1年間の栽培禁止期間を、さらに4年間(2008年まで)延長。試験栽培も大幅に制限して実施。
・ ニューサウスウエールズ州、連邦政府から栽培許可を受けたモンサント社などから申請のあった試験栽培面積3,500haを約100haに大幅縮小する方針。昨年からの3年間の商用栽培禁止期間は変わらず。
・ 南オーストラリア州、新たに3年間の商用栽培禁止を決定。試験栽培は許可制。
・ 西オーストラリア州、期限を定めず栽培禁止を決定。
・ タスマニア州、昨年定めた2008年までの商用栽培禁止期間は変わらず。ただし、栽培規制を強化する動きあり。
輸出市場への影響を懸念
VIC州政府は、州内に乳製品や穀物など多くの食料品輸出企業を抱えていることから、GM作物に対する海外市場の動向に注目しており、輸出業者の意向などを踏まえて、「現時点ではGM解禁による利益よりも輸出市場に対するリスクの方が大きい」とするなど栽培禁止期間延長を決めた理由を次のように述べている。
・ 食料品産業界や農家部門、地域社会には、GM作物の安全性について意見の不一致や根強い疑念が存在する。
・ 州内の主要な食料品輸出業者であるマレー・ゴールバン、タチウラ、豪州小麦輸出公社(AWB)などは、輸出市場に与える影響を考慮しGMカノーラの栽培延期を求めている。
・ 主要な輸出先である中東諸国はGM作物に懸念を抱いており、VIC州が持つ輸出市場を喪失する危険を犯したくない。
なお、同州政府は、商用のGMカノーラと非GMカノーラの共存試験の実施について、具体的に解決すべき問題として、次の事項を挙げている。(1)責任と保証の問題、(2)カノーラを栽培している他州との調整、(3)州内のGMフリーゾーンとの関係、(4)GMと非GMの分別生産流通管理の指針、(5)欧州を含むGM作物に対して敏感な輸出市場の対応
乳業メーカーも解禁に否定的
報道によると、VIC州内の乳業メーカーは、GM作物の栽培解禁に否定的であり、それぞれ次のように述べている。
・ マレー・ゴールバン、州政府はGM作物の栽培禁止を継続すべき。我々の使命は消費者の要望に沿った製品を供給することだが、現在多くの消費者は、GM作物がフードチェ−ンに入ることを望んでいない。
・ タチウラ、GM作物がフードチェーンに入ることを望まない。特に日本市場や育児用粉乳やクリームチーズ市場など付加価値を持つ市場には不適当。世界的な牛海綿状脳症(BSE)などの発生以来、消費者は農作物の安全性について不信感を抱いており、消費者がGM作物の安全性を十分納得するまでは、GM作物を利用できない。解禁は、その安全性が確実に消費者や重要な輸出市場に受け入れられるようになってから。
・ ボンラック、GM作物の開発と産業に与える影響を興味深く見守っている。
・ ワルナンブール、産業界の意見を支持する。
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