連邦政府が次期予算案を発表、生体家畜取引対策など重点 ● 豪 州


7年連続財政黒字予算案、今年度は福祉型予算が目玉

 連邦政府は5月11日、2004/05年度(7月〜6月)の予算案を発表した。好調な国内経済を反映して、国内総生産(GDP)成長率3.50%という経済成長見通しの下、歳入は所得税の収入増加などから前年度比8.4%増の1,932億豪ドル(15兆4,560億円:1豪ドル=80円)、歳出は同8.3%増の1,923億豪ドル(15兆3,840億円)と、7年連続の財政黒字となる予算案となった。

 今回の予算案の目玉は、総額約367億豪ドル(2兆9,360億円、1〜5年間で支出)からなる、大型減税、出産奨励金などの家族支援、高齢者支援などの家庭支援的予算であり、報道によると、「今年度行われる選挙対策の色が濃い」とも指摘されている。

農業予算は記録的な額、ワイン、砂糖産業も支援

 農業関連予算については、全体で約20億ドル(1,600億円)と記録的なものとなった。新規または予算を追加した重点項目は、(1)干ばつ対策の強化、(2)農家の教育訓練、転廃業などへの支援対策の強化、(3)ワイン産業への減税による支援(3億3,800万豪ドル、270億4千万円)、(4)米国とのFTA協定で何らの利益も受けなかった砂糖産業への支援(4億4,400万豪ドル、355億2千万円)などとなっている。なお、連邦政府は、単年度予算と併せて、その施策の将来にわたる実施期間分の予算案を策定している。

畜産分野、干ばつや生体家畜取引対策など

 主な新規または予算追加のあった畜産関連項目の概要は以下の通り。

○ 干ばつ対策費、干ばつの影響を受け例外的環境(EC)地域として認定された地域の支援対策に、7,300万豪ドル(58億4千万円)を追加支援し、2005/06年度までに総額11億豪ドル(880億円)の支援を行う。    

  豪州では干ばつ再来の懸念が続いており、現在、EC認定地域は全農地面積の62%に及んでいる。干ばつ対策については、EC地域の認定基準などをめぐって連邦政府と州政府間で意見の不一致があり、全国的な会議が開かれ検討が進められている。干ばつ対策は、EC地域の農家や中小企業事業者に対し、支援金の給付、カウンセリングサービスの実施、雇用支援、優遇税制処置などを行う。

○ 農家の教育訓練、転廃業などへの支援対策費、1997年から実施されている農家支援対策に、5年間で総額2億3,800万豪ドル(190億4千万円)を追加する。

  経営改善のための教育訓練、新技術の採用への補助、経営に関するカウンセリングの実施などのほか、今回は、低所得者層への転廃業支援金をアップ(全体の受取額は最大で5万ドル(400万円))する。

○ 生体家畜取引の改善費、4年間で1,130万豪ドル(9億円)

  生体家畜取引の改善に関するケリニーレポートの勧告案を受けて作成された政府案の予算措置。

・ 中東に獣医師のカウンセラーを駐在させる経費、4年間で330万豪ドル(2億6千万円)
・ 輸入国の生体家畜の取り扱いについて、動物福祉の観点からの改善支援のための経費、4年間で400万豪ドル(3億2千万円)
・ 新たな規制に基づいて行われる生体家畜産業の立ち上げのための経費、3年間で200万豪ドル(1億6千万円)
・ 豪州検疫検査局(AQIS)が生体家畜取引に関して行う経費、4年間で200万豪ドル(1億6千万円)

  なお、このほか研究開発費に年間65万豪ドル(5,200万円)提供される見込み。

○ 動植物の疾病発生に備えるためのバイオセキュリティ対策費、4年間で2,160万豪ドル(17億2,800万円)

○ ウイルス性伝染病対策費、830万豪ドル(6億6,400万円)

  SARSや鳥インフルエンザなどのウイルス性伝染病の進入を防ぐため、海外から送られる郵便や荷物に関する空港や港湾でのチェック体制の強化、注意喚起のための広報活動や北方の国境監視体制の強化などを行う。

○ 主要な貿易相手国(特に中国、インドネシア、タイ、フィリピン)との2国間貿易強化費、4年間で640万豪ドル(5億1,200万円)

○ バイオテクノロジー技術開発支援費、4年間で380万豪ドル(3億400万円)


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