ブロイラー産業動向について公表
マレーシア農業省獣医局は、同国半島部における2003年のブロイラー業界の現状と2004年の見込みに関する報告書を公表した。これによると、中国からの飼料原料の輸入量減少の影響により少なくとも今年半ばまでは飼料原料価格の高騰が予想されるほか、アジア各地で確認された鳥インフルエンザの発生により鶏肉需要が減少し、この影響で鶏肉価格が下落するなど、同国のブロイラー産業を取り巻く状況には不確定要素が多いとされた。
報告の中では、2003年の初生ひな生産量は4億3千万羽で、前年比1.6%増となっている。同省は2004年の目標値として4億6千万羽を見込んでいる。取引価格は2003年平均1羽当たり1.05リンギ(30円:1リンギ=29円)で、0.5〜1.45リンギ(15〜42円)の間で推移した。
2003年のブロイラー生産量は4億1千万羽、前年比2.5%増となっている。また2004年の目標値を4億4千万羽としている。農家取引価格は年間平均の生体重換算1キログラム当たり2.91リンギ(84円)で、1.7〜3.5リンギ(49〜102円)の間で推移した。ブロイラー生産費は1羽当たり2.43〜3.11リンギ(70〜90円)の間で推移した。
2003年のブロイラー輸出量(羽数)は前年の4千4百万羽に対し4,376万羽とわずかに減少している。ただし、鶏肉重量ベースでは前年の6,940トンに対し7,400トンとかなりの増加となっている。鶏肉輸入量は前年の2万5,000トンから2003年は1万8,900トンと大幅に減少している。平均飼料価格については2002年からトン当たり185リンギ(5,365円)上昇した。内訳としてトウモロコシが前年比33%、大豆が45%、その他魚粉、フスマ、パーム油などは6.7〜8.3%の値上がりとなっている。
また、2003年の年間初生ひな生産能力が54万羽〜1億羽であるブロイラーのペアレント・ストック(PS)生産会社は合計29社とされている。
一方、国内半島部PS飼養羽数は2003年で460万羽、前年比9.3%増となっている。鶏種別内訳としてはアバ・エーカーおよびコブが全体の6割を占める。その他としてはエビアン、ロス、ハバードなどが飼養されている。国内産のPSは全体の52%で残りは輸入となっている。
生産者団体は価格統制制度の改正を要望
マレーシアでは畜産物価格が政府により統制されており、消費者保護を目的とした上限価格が設定されている。しかし最近の飼料価格の高騰を受け、畜産用飼料原料の多くを輸入品に依存する同国では、国内で生産される畜産物の生産費も増大しており、生産者にとって困難な状況が生じている。
同国畜産農家協会連合(FLFAM)は国内取引・消費者担当省(MDTCA)による価格統制は上限価格を超えた価格で畜産物を取引した業者を取り締まるのみで、飼料価格が低落した場合、農家販売価格が低く押さえられ、仲買業者が差益を吸収し、農家にとって適正な小売価格で販売されない状況にあると指摘している。
このような状況では生産者は、変動する生産費のリスクを回避するために実需に合わせた価格で販売できないとして、3月の総選挙で政権を維持したアブドラ内閣に価格統制制度の抜本的な改正により国内生産者を保護すると同時に国内畜産業の振興策を講じるよう求めている。これに対して政府は関係各省連携による制度改正に関する検討を開始しているとされている。
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