生乳生産は10%の伸び
タイ農業協同組合省畜産開発局(DLD)は、このほど、2003年の同国の酪農乳業の概要を発表した。それによると、暫定値ではあるが、生乳生産量は約73万トンで前年の66万トンから約10%の伸びとなった。
DLD認定農場の増加
DLDは衛生的な生産を普及させるため、農場の衛生条件などの認定制度を1999年から導入しているが、2002年1月に207カ所だったDLDの認定農場は2003年12月には263カ所に増加しており、生乳生産者の衛生などに関する意識の向上が認められる。
この認定基準は、農場に関して、(1)出入口での消毒の実施、(2)畜舎の衛生管理、(3)頭数に見合ったスペースの確保、(4)作業に関しての適正人員の確保、(5)効果的なワクチン接種計画−の要件を備えているかについて規定し、疾病の防止等、生産性の改善に寄与している。
ただし、263カ所の農場はDLDの衛生教育を受けた1万6,278戸の酪農家のうちの1.6%にすぎないので、今後の改善がおおいに期待されている。
口蹄疫の影響は軽微
このように着実な生乳生産の拡大が認められる一方、7月と11月に中央平原で口蹄疫(FMD)が発生し、乳牛も影響を受けたが、大事に至らず、ワクチンの接種によって事態は収拾した。この要因は、農家の衛生知識の欠如により、適正な検査がなされずに他の地域から導入された患畜が原因となって発生したものとされている。生産性向上のためには、一層の衛生管理の充実が求められている。
乳製品の輸入と輸出
2003年の乳製品の輸入については、脱脂粉乳が7万3,657トンで全体の40%を占め、ホエイパウダーが4万6,524トンと同25%、全脂粉乳が3万0,216トンで同16%、乳脂が833トン、バターミルクが700トンであった。
一方、輸出については、加糖れん乳が14万1,319トンで全体の55%を占めたが、これには乳脂肪分を植物油脂に置き換えたもの12万4,933トンが含まれている。そのほか、無糖れん乳は5万2,594トン同21%、アイスクリーム1万3,848トン同5%、ヨーグルト4,100トン同2%および乳酸飲料3,300トン同1%であった。
消費キャンペーンと生産対策
国内で生産された生乳のほとんどは飲用乳に仕向けられ、超高温殺菌牛乳(UHT)や低温殺菌牛乳として学乳および一般向けに市販されるが、2002年以降生乳生産量が増加していることと消費が伸びないため、需要との間で大きなギャップが生じているとされる。
このことについて、今年の4月末に大手酪農3組合の代表と農業協同組合省(MAC)が会合を持った。組合側の要求は政府の学乳の枠が少なく、生産される生乳の一部が買い入れ対象外となるので対策を講じて欲しいというものである。
これに対して、MACは、当面の対策として学乳用原料の買い入れ期間を現在の 270日から300日にするよう、内務省に申し入れを行う一方、長期的には牛乳消費キャンペーンを行い、一人当たり消費量を10%伸ばして11〜12リットルにしたいというものであった。
このキャンペーンは乳業メーカーが3千5百万バーツ(9千6百万円:1バーツ=2.74円)の資金を出し合い、5月から実施するとしている。
またDLDは、今後も農場の衛生改善を継続するとともに、農業協同組合振興局(CPD)は酪農組合の組合員に対して、農場の改善に対する5億バーツ(13億7千万円)規模の低利ローンを設定しており、2千戸の酪農家が対象になるとしている。
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