米国内で初のBSE発生(その 9 )


中枢神経系の症状が疑われる牛のBSE検査を行わず

 米国農務省(USDA)食品安全局(FSIS)と動植物検査局(APHIS)は5月3日、4月27日にテキサス州サンアンジェロの食肉処理場で中枢神経系の症状が疑われる牛が、BSE検査を行われずにレンダリング処理されたことについて、調査を行っていると発表した。これは、米メディアが「テキサス州で中枢神経症状を呈した牛がいたにもかかわらず、BSE検査を行わなかった」との報道を受け、USDAがその事実を確認した形となっている。発表では、(1)FSISの獣医師が、当該牛がよろめいて倒れたため、けがまたは、中枢神経系の疾患とされる健康状態であるとして、当該牛を廃棄処分にするとした、(2)通常の手順では、このような中枢神経症状が疑われる場合、APHISの検査官が検査のための採材を行うまで牛の処分は留保されることとなっている、(3)しかしながら今回のケースでは、それが行われず廃棄処分とされ、レンダリングに回された、(4)当該牛から製造されたレンダリング製品は、人のフードチェーンには入らず、人の健康へのリスクはない、(5)食品医薬品局(FDA)が定める飼料規制により、製造されたレンダリング製品は他の牛および反すう動物に給与されない、(6)このケースが起こった状況の調査を行うとともに今後は適切な処置を行うようにするとしている。

 今回のケースを踏まえFSISとAPHISは同月5日、と畜前の生体検査において中枢神経症状を疑う牛が発見された場合の取り扱について、これまでの手順を再確認し速やかに適切な検査を行うこと、APHISが検査用のサンプルを採材しなかった場合、その理由と経過を明らかにし文書により提出することとする内容の指示文書を検査官に発した。

FDA、当該牛から製造された肉骨粉の調査を開始

 FDAは同月4日、今回のケースについて、動物飼料の安全性を確保する観点から、食肉処理場、レンダリング工場などでの調査を開始したと発表した。問題となっている牛は既にレンダリングされ肉骨粉に製造されており、これらはレンダリング施設で保管されている。今回のケースではBSE検査を行うことができなかったが、仮にその牛がBSEであったとしても、FDAの飼料規制により製造された肉骨粉の牛および反すう動物への給与が禁止される。FDAは当該レンダリング施設に対し問題の牛由来の肉骨粉を豚用飼料にのみ使用することについては反対しない旨の文書を送る予定であるとし、この肉骨粉が豚用飼料のみに使用されない場合、全て廃棄される予定であるとしている。また、豚用飼料のみに使用する場合であっても、FDAがこの製造施設から飼料利用農場にいたるすべての流通過程において豚用の飼料として使用されているか厳密に監視するとしている。

米政府、肉牛生産者団体の提訴を受け、カナダからの牛肉の輸入条件緩和を停止

 USDAは5月5日、米国牧場主・肉用牛生産者行動法律財団(R-CALF USA)が、4月19日にAPHISが公表したカナダからの牛肉の輸入条件緩和措置の停止についてモンタナ州の連邦地方裁判所に提訴していたことについて、R-CALF側の主張に沿って和解し、輸入条件緩和措置を停止すると発表した。APHISが公表した措置は、既に承認されている骨なし部分肉に加え、骨付き部分肉、ひき肉および牛肉加工製品が対象となっているほか、タン、心臓などの副生物が含まれるとともに30カ月齢未満のものという条件も撤廃されていた。R-CALFのブラード会長は「USDAは輸入条件の緩和を急ぐため消費者の安全や健康について軽視した結果、今回の和解に至った。USDAは我々の提訴に抗弁するのは困難であると認識したのだと思う。我々は引き続きUSDAに対し、BSE予防のための国際的に認められた最低限の安全水準を満たすよう主張していく」と述べた。


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