塩分を含んだ草で育ったフランス北部ソム湾の子羊肉





 ソム湾のプレサレ農家による団体が飼育管理方法などを定め、これに従って生産された子羊肉(プレサレ)をエストラン(ESTRAN)という統一した名称で販売している。現在エストラン生産に加盟している農家は13戸で、約3,600頭の雌羊を飼養している。エストランとして年間約2千頭の子羊を販売している。


 
 出産シーズンは12月初めから3月初めにかけてであり、暖かくなり始める3月中旬頃から、放牧に出る(11月まで)。12月から3月中旬までは、各農家の小屋で飼育される。    放牧に出た子羊たちは、潮風のあたる、また、時には海水に浸る草のみを最低75日以上食べる。


 品種は、ほとんどがサフォーク種あるいは交雑種である。少数ではあるが、ハンプシャー種(中央)やイル・ド・フランス種も飼育されている。  


 
 湾の周辺道路近くの木のかげに、羊飼いの小屋がある。毎日羊飼いが潮の満ち干や羊の生育に合わせ、牧羊犬を従え草のある場所へ羊を移動させる。    エストランとして販売される子羊は、通常の耳標を一方の耳に装着するほか、"EST"という文字と飼育者の番号を記した小さな金属のタグを他方の耳に装着し、ほかの子羊と区別している。


 
 エストランとして販売されるプレサレは、牧草地の区域も定められている。    肉には、エストランのマークがついて売られている。


   エストランは、フランスの製品の原産地と品質を保証するAOC制度にソム湾のプレサレ(Agneau de pre-sale de la Baie de Somme)として、登録申請中であり、早ければ今年中にAOCに登録される予定である。モン・サン・ミッシェルのプレサレもソム湾のプレサレ同様、AOCに登録申請中である。


 
 エストランは、ほとんどがソム湾のあるピカルディー地方で消費されている。また、北のノール地方、西のノルマンディー地方など全部で50店ほどのエストランを取り扱っている肉屋、レストランがある。写真は、アミアン大聖堂近くの肉屋(左)、レストランの看板(右)





 ソム湾の中心のル・クロトワ村では、毎年10月1日前後に「羊祭り」を開催している。3月中旬に小屋から放牧に出されていた羊を、10月1日前後に海を渡って村に戻ってきた慣習からこの時期に開催している。観客に迎えられる中、村に戻ってきた羊が砂浜を歩く様子がこの祭りのクライマックスである。


 
 お祭りでは、地元のシェフたちが焼いたプレサレが、PRのため無料で振る舞われた。    砂浜では、羊飼いが牧羊犬を使って羊の群れを操る実演をしている。羊飼いは、声または笛で「右」「左」「前」と牧羊犬に指示するだけである。


ブリュッセル駐在員事務所 山崎良人、関 将弘 


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