7月1日から健康牛のBSE検査月齢を24カ月齢以上から30カ月齢以上へ引き上げ
フランスでは、7月1日から食用に供される健康な牛の牛海綿状脳症(BSE)検査の対象月齢を「24カ月齢以上」から「30カ月齢以上」に引き上げた。
EUの規則(EC/999/2001)の下では、食用に供される健康な「30カ月齢以上」の牛は全頭BSE検査が義務付けられている。しかし、EU15カ国のうちフランス、ドイツ、イタリア、スペインの4カ国では、EU規則よりも検査範囲を拡大し、「24カ月齢以上」の健康な牛を検査対象としている。
フランス食品衛生安全庁(AFSSA)は2003年2月、食用に供される健康な牛のBSE検査の対象月齢を「24カ月齢以上」から「30カ月齢以上」に引き上げることに関する調査を行う専門委員会を設立した。その後専門委員会は調査を行うとともに、2003年9月、AFSSAに対しこの件に関する意見(opinion)を発表した。なお、「24カ月齢以上」から「30カ月齢以上」に引き上げることについて調査などを行うこととした背景には、それまで実施してきた対策の効果を検証する目的があったと考えられる。
EUでのBSE患畜の評価
専門委員会が行ったEUとフランスの48カ月齢未満のBSE患畜についての評価は次の通り。
2002年においてEUで確認された48カ月齢未満の患畜は7頭であり、このうち36カ月未満の患畜は、イギリスで確認された32カ月齢のものと、ポルトガルで確認された34カ月齢のもののみであった。さらにこの2頭は、イギリスの牛は1999年3月生まれ、ポルトガルの牛は1999年8月生まれといずれも肉骨粉の給与を禁止した後に生まれた牛であった(各国での肉骨粉給与禁止は、イギリスで1988年、ポルトガルで1998年12月)。このことから専門委員会は、肉骨粉の給与禁止後に生まれた牛でさえも、BSE患畜がまだ2例確認されていることを踏まえ、30〜36カ月齢の牛については引き続きBSE検査を続けるべきであると結論付けた。
フランスでのBSE患畜の評価
フランスにおいて2001年以降に確認されたBSE患畜についてみると、48カ月齢未満の患畜は2例のみであった。1例は、29カ月齢、もう1例は42カ月齢であった。しかし、29カ月齢の牛は、本当にBSEであったという事実に疑問が持たれている。また、患畜の月齢をみると、1999年の平均は5.26歳、2002年には6.40歳となっている。
また、欧州委員会によれば、フランスにおける2001年と2002年の24カ月から30カ月齢でのBSE患畜が出る割合は、百万頭当たり1.277頭(0.0000012%)、2002年だけでみると同0.27頭(0.0000002%)であると推計している。
このことから、専門委員会は、1999年以降、BSE患畜の平均月齢が上昇していること、また、肉骨粉をすべての家畜に飼料として給与しておらずまたそのほか影響する要因がないと仮定すると、2001年12月以降に生まれた牛にBSE患畜は発生しないと考えられることから、フランスにおいてすべての家畜に肉骨粉給与などの禁止措置を実施した2001年12月以降に生まれた牛が30カ月齢となる2004年7月以降であれば検査対象月齢を引き上げても良いと結論付けた。
関係者は冷静な対応
この専門委員会の意見を踏まえ、フランス農業漁業省は4月7日、フランスでの食用に供される健康な牛のBSE検査月齢を「24カ月齢以上」から「30カ月齢以上」に引き上げる規則を施行し、7月1日から適用している。
食肉関係団体によれば、欧州では特定危険部位(SRM)を食物チェーンから排除することにより、牛肉の安全が確保されていること、また、BSE検査はBSEの湿潤状況などを調べるものであるとの知識が普及している。このようなことから、消費者団体を含め関係団体は今回の検査対象月齢の引き上げを冷静に受け止めている。
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