豪州農相、対米牛肉輸出割当枠配分を堅持


 豪州連邦政府のトラス農相は6月28日、食肉諮問協議会(RMAC:食肉産業界の政策決定機関)から一時停止を要請されていた2004年の残りの期間における米国向け牛肉割当数量配分システムを継続する方針を発表した。

 現行の対米牛肉関税割当数量37万8千トン(暦年管理で枠内税率:キログラム当たり4.4米セント、枠外税率:26.4%)に対しては、2001年に初めて輸出量が割当数量を上回ったことから、2002年からの割当ては対米輸出実績に基づいて業者別配分を行うこととした。

 なお、両国議会で承認あるいは批准の審議が行われている豪米FTA合意内容においてこの割当数量は、枠内関税の撤廃や数量の増加などを内容としつつも、撤廃まで18年間に及ぶものとなっている。

業界は柔軟な運用を要請

 RMACからの業者別配分方式の一時停止要請は、輸出パッカーを主な構成員とする豪州食肉産業協議会(AMIC)からの提案に基づき、干ばつの影響による生産減少見込みや米国でのBSE発生による日本向け輸出需要の強まりで米国向けの輸出が減少したことを背景に、次のような理由から行われたものである。

(1) 豪州牛肉業界は現在、今年の対米牛肉輸出量が関税割当数量に届かないと確信しているため、輸出業者に設定された配分枠はもはや必要がない。

(2) 業者別配分は、超過供給になる可能性が高い場合、秩序ある輸出を実施する上で重要であるが、今年の残りの期間も制限を維持することは、(自分の持つ配分枠以上に輸出しようとする)輸出業者が配分枠の権利の売買に無用な価値を支払うことになる。

農相は着実な輸出実行が重要と強調

 要請に対して同農相は、現在の米国向け輸出動向から今年は割当数量を満たせないとの業界からの提案に理解を示したものの、重要なことは高い水準の信頼性と確実性を伴った輸出を実行することであるとしつつ、具体的に次のように述べた。

(1) 毎年発行される割当数量の配分資格は一方的に変更されず、どのような資格におけるいかなる投資も守られるという信頼の高いシステムを個々の輸出業者に対して確保しなければならない。

(2) 現在、割当数量の配分資格を使わない業者がある場合、必要に応じて他の業者が追加の配分枠を得ることができる健全で柔軟な取引環境が存在する。

(3) 現在の業者配分システムが全体の割当数量を制限しているという証拠はなく、(配分枠の)市場が米国向け牛肉輸出割当数量は満たされないと確信した時に配分枠の購入価格は消散するだけである。

 加えて、2002年の米国向け牛肉輸出割当数量の運用に関する上院ヒアリング時に、業界側が一貫性のある確実な管理システムを要請した経緯に触れ、「業界は現在の政策の前後関係においてこの問題を考慮すべきである」と押し返した。

現行ルール内での再配分の検討を示唆

 なお、同農相は、最近の輸出動向などから「豪州の米国向け牛肉輸出が増加する可能性は残っている」としている。

 記録的な日本向け輸出の陰で目立たないが、最近の対米輸出量を見ると、1〜5月で対前年同期比8.5%減の12万2千トン、1〜6月で同4.2%減の15万5千トンと割当数量に対する充足率は上半期で半分を満たしていないものの、徐々に増加する傾向にある。

 ただし、同農相は、関税割当の着実な実行を図るため、8月にも割当業者から未消化枠分の回収に取り掛かる意向であることを示唆している。


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