各地で鳥インフルエンザ再発          ● タ イ


各地で鳥インフルエンザ再発

 7月上旬以降、中国、タイ、ベトナムと相次いで鳥インフルエンザが再発生したと報告されている。タイ農業協同組合省畜産開発局(DLD)は、国内での発生状況を国際獣疫事務局(OIE)に以下のように報告した。

 7月7日、同国中央部バンコク近郊のアユタヤ県およびパチュンタニ県の採卵鶏農場で合計820羽の死亡が確認され、タイ国立家畜衛生研究所による検査の結果鳥インフルエンザ(A型の血液亜型H5と確認、以下同様)とされ、約2万5千羽がとう汰された。

 同9日、北部スコタイ県およびウタラディット県の、合計4カ所の採卵鶏農場および地鶏農家での発生確認が報告され、とう汰羽数は約2千羽。同13日には中央部パチュンタニ県、アントン県、スパンブリ県のほか、北部ナコンサワン県のブロイラー農場、採卵鶏農場などでの発生が報告された。とう汰羽数は約4千羽とされる。

 13日までの発生報告は全国で7県に及んでいる。

 なお、DLDによる中長期的対応として行われていた「タイ鳥インフルエンザ調査」に基づく能動調査によって東北部コンケン県で一部疑い例が発見されたため、約3千羽がとう汰されたが、その後の東北部地方獣医研究診断センターによる調査によりニューカッスル病と確定診断されたため、7月12日付けでOIEに報告されている。

野生鳥類の戦略的とう汰を示唆

 同国タクシン首相はこのような状況の中で、一部学識経験者から、コウノトリなどの渡り鳥によって中国南部からウイルスが伝播されている可能性が示されていることを受け、7月9日、これら野生鳥類を含め、国内に存する鳥類全般について鳥インフルエンザ予防対策としての戦略的とう汰の可能性を示唆した。

ワクチン使用の要望高まる

 鳥インフルエンザの再発を受けて7月9日、EUはタイ産鶏肉の輸入停止を12月中旬まで延長するとした。このように主要輸入国の輸入停止措置の長期化が避けられない中で、同国では既に大手鶏肉生産業者を中心に加熱調製品への生産転換を進め経営リスクの低減を図る動きもでている。

 しかし、大規模経営体と中小家きん農家の混在する同国の状況では疾病のコントロールに際し課題が多く、大手生産者からは輸出産業保護を目的とし、効果的に疾病コントロールを行うために、国内仕向けの家きん肉を生産する中小家きん農家に対してのみ、限定的にワクチンを使用することを認めるよう要望が挙げられている。

 これに対しDLDなどは、輸出仕向けに、国内5カ所にわたる養鶏地域化計画の策定を検討する一方、現在OIEの基準では人間に感染する能力を持つウイルスタイプへの遺伝変異を防止する目的でワクチンの使用が制限されていることを理由に、生産者からのワクチン使用に関する要望を却下している。

北部ラオス国境各県で防疫体制強化

 一方、鳥インフルエンザが再び全国的にまん延する危険性が高まっていることから、DLDは先月末から、ノンカイ県やムクダハン県などの東北部ラオス国境各県で、家きんおよびその製品の輸出入について24時間態勢のチェックポイントを設け防疫体制の強化を図っている。

◎ベトナムでも鳥インフルエンザ再発

 なお、ベトナム農業・農村開発省家畜衛生局がOIEに報告した鳥インフルエンザ(ホーチミン市地方獣医センターにおいて血清亜型H5まで同定)の再発生状況は、7月1日報告の南部ホーチミン市近郊バクリエウ県および同10日報告の南部ティエンザン県で、死亡羽数は合計約1千羽、とう汰羽数は約7,700羽とされた。同国ではこのほかにもホーチミン市周辺を中心とした南部メコンデルタ地域で疑い例が増加しつつあるとされている。

 また、同国の家畜伝染病の専門家は遺伝子突然変異の状況を確認するため、豪州の研究機関に詳細な検査を依頼している。


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