FTA協議に国内生産者の不安高まる       ● タ イ


7月5日にFTA協議締結を予定

 タイは現在豪州との二国間自由貿易協定(FTA)に関する協議を進めており、7月5日にタクシン首相の訪豪に合わせて正式に協定を締結する見込みであり、協定発効後、段階的に関税撤廃を行うこととされている。これにより、2005年1月1日以後、豪州からの輸入品目の約8割に相当する先行関税引き下げ品目(アーリーハーベスト)については直ちに輸入関税が撤廃される。

 ただし、牛肉・豚肉や乳製品などの一部センシティブ品目については特別セーフガードを設け、2020年までの間は規定のトリガー基準量を超えた場合、現行のWTO基本税率もしくは特恵税率のどちらか低い方が適用される。そのほかに乳製品(HSコード0401、0402)では関税割当量を設け、割当数量内の関税率を2025年までに20%から0%にすることとし、段階的に関税を撤廃することとしている。

 なお、脱脂粉乳(HSコード、0402.10)の割当数量は2005年の2,200トンから2020年には約3,524トンまで拡大し、2025年までこの数量を維持するとしている。

 同国の2003年乳製品輸入実績は暫定値で18万5千トン、うち粉乳(脱脂粉乳、全脂粉乳)は全体の56%を占め、その多くをEU、NZ、豪州から輸入している。

 また、同国は6月中旬からNZとFTA交渉を開始しており、豪州と同様国内生産者からセンシティブ品目については関税撤廃の例外品目とするよう要望が上げられている。

国内生産振興策

 政府は段階的関税撤廃の期間中に国内生産振興策を講じることで国産品の競争力を高めたいとしている。また、関税割当数量は現在の輸入実績から比べてわずかであり、当面、国産品に及ぼす影響は軽微であるとしている。しかし生産者団体からは生産コストの点で豪州産品などと競合することは15〜20年の短期間では難しいとするなど、不安の声が高まっている。主な国内対策の内容は次の通り。

○酪農振興対策

 農業協同組合省(DLD)傘下の協同組合促進局は4月、総工費7億バーツ(19億6千万円:1バーツ=2.8円)の粉乳生産工場建設について予算要求を行った。同国では中部地域で1993年から同国酪農開発計画に基づき重点的な酪農振興を図っており、同局によると、中部ロプブリおよびサラブリ県周辺に1日当たり300トンの粉乳生産能力を有する工場を建設することで粉乳の輸入依存体質を改善したいとしている。

 同国では、集乳時の品質管理面での問題や、季節による需要格差などの理由で恒常的に生乳の供給過剰状態が発生しており、工場の建設によりこれを緩和したいとしている。

 また生乳の乳質改善を図るためには、DLDおよびチュラロンコン大学の協力の下、約5千戸の酪農家による新たな酪農協会が設立された。ここでは、集乳のグループ化を促進し品質向上を垂驍ニ共に、生産性の向上と生産コスト削減を実現するために経営管理ソフト開発、提供を行うとしている。

○肉牛生産振興対策

 同国農業相は対豪FTA締結に先立ち、6月初旬に肉牛生産振興対策として総額100億バーツ(280億円)の資金枠で豪州より100万頭の素牛を導入し、1農家当たり2頭を低金利で貸与する事業計画を発表した。この計画では肥育終了後農家に貸与した素牛の増体重分を市場価格相当で買い上げるとしているが、計画発表後関係者の間で、豪州産素牛の同国における気候順応能力に疑問の声が上がった。同相はその後、調達素牛を国内品種に変更することを検討しているとするなど、今のところ見通しは不透明なものとなっている。


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