望まれる乳製品需要の拡大        ● インドネシア


高い輸入依存

 インドネシア畜産総局による2002年の乳牛頭数は35万8千頭で、生乳生産量は49万3千トンとなっている。また、生乳換算で138万トンの乳製品の輸入がなされ、同30万トンの乳製品が輸出されている。輸入量は実に国内生産量の2倍以上となっている。

 同国の酪農政策は1998年のUR合意により、それまで採用していたローカルコンテンツ方式(国産生乳の使用量に比例して輸入量を決定する方式)を同年に止めた後、2000年には乳製品関税の引下げを行い、酪農家は、輸入乳製品との競争に直接的にさらされることになった。

 なお、同国の酪農は人口の多いジャワ島を中心に営まれているが、平地が少ないことと気候の面から、特に山岳地方で盛んとなっている。

余乳の発生

 6月下旬、中央ジャワ州のセマラング地方で生産された生乳がインドネシア酪農業協同組合連合会(GKSI)から買入れを拒否されるという事態が発生した。これはGKSIがインドネシア乳業メーカー協会(IPS)の決定した生乳の買取りに関する品質基準を満たしていなかったためとされている。

 しかしながら、当地域の農村単位酪農組合(KUD)によれば、IPSの要求した基準の内容は、生乳の固形分が11.3%、乳脂肪分が3.3%以上などであるが、生産者はこの基準を満たしており、決定内容の通知後も2カ月ほど買取りは続いている。これらのことから、買入れ拒否は、品質を理由にしたメーカー側の余乳対策とも考えられるが、結果として生産者側は1日当たり11トンの生乳の販売先を失うことになった。

 一方、隣の東ジャワ州でも10トン単位での余乳の発生が危惧されている。この地域ではネスレインドネシア社がこれまで1日当たり530トンの生乳を買い入れていたが、この買入れ枠を7月から510トンに限定するとしている。

 当地域には13万頭の乳牛が飼養され、そのうち6万3千頭の搾乳牛から、現在1日当たり、610トン前後の生乳が生産され、ネスレ社のほか数社で全量買い入れているが、今後も順調な生産が見込まれており、余乳の発生が避けられない事態となっている。

 同国での1農家当たりの乳牛の平均飼養頭数は3頭規模と少ない上、1頭当たり乳量も10キログラム程度のため、多くの農家がこれらの影響を受けることとなる。

需要の拡大が必要

 これらの余乳問題に関して、生産者側は、新たな生乳販売先の開拓などを検討しているが、それが実現したとしても、これまでの販売価格を大きく引き下げて取引せざるを得ない状況であり、現時点で、有効な対策は見つかっていない。

 このように主要産地で生乳が余る傾向にあるが、生乳の一連の買入れ拒否や買入れ枠の設定は、生産してもそれに見合った消費がなされない需要の弱さが主な原因であると考えられる。

 同国の一人当たり乳製品消費量は生乳換算で2002年には7キログラムにすぎず、ジャワ島だけでも人口が1億人を超えていることと合わせると、国内に膨大な潜在需要が秘められていると考えられることから、今後の国内需要の拡大による需給バランスの改善が期待される。


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